あん

【映画「あん」*生きていることの哀しみと素晴らしさ】

 

ウワサの映画「あん」やっと観ることができた

 

 

映画が終わって秦基博くんの曲が流れて

 

 

誰もいないかのように静かで
ほとんどの人がエンドロール最後まで
席を立たなかった

 

 

わたしもしみじみした余韻に浸って
ラストシーンの千太郎さんの表情と声が
何度も何度もリフレインするようだった

 

 

映画は終わったのに
徳江さんの声がずっと聞こえるようだった

 

 

監督は河瀬直美さん

 

 

 

 

千太郎さんを演じる永瀬正敏さんは
「濱マイクシリーズ」からずっと気になる俳優
彼も年を重ねて益々魅力的になった

 

 

「隠し剣 鬼の爪」の主人公で
武士の月代をカツラでなく実際にやったり
夜に公園で剣の稽古をして職務質問を受けたとか

 

 

今回の「あん」の舞台挨拶やインタビューで
3枚目な素顔っぽいところが垣間見れ
作品の素晴らしさがあふれるように語られる

 

 

無口な2枚目から大きく脱皮!

 

 

徳江さんを演じる樹木希林さんは
映画「悪人」で
主人公のおばあちゃん役をされた
やくざのような悪徳業者に
体を張って見せたあの表情が
わたしは忘れられない

 

 

 

今回の徳江さん(役名)は
希林さんのどこか笑いを誘う部分を残しながら
生きているヨロコビと哀しみが見事だった
永瀬さんの千太郎は
口数少なく無表情で黙々とどら焼きを焼く姿や
アルコールにむくんだ顔までリアル
今 作りました、というような手軽さや
なんとなくこんな感じでしょう、ではなくて
最初から最後まで千太郎さんそのもの
この映画があまりに良くて
色々調べていたら
永瀬さんのインタビューで
河瀬直美監督は演技することを求めず
撮影の期間はずっと千太郎さんでいることを
求めたと言う
千太郎さんのアパートに住んで
その街の銭湯に行って
朝起きたら千太郎さんで階段を下りる
その中で撮影されたらしい

 

 

 

 

 

希林さんが演じる徳江さんも
指や手が不自由な動作や歩き方までが
76歳でありハンセン氏病だった

 

 

 

何よりすごいと思ったのは
どら春を去って張り合いをなくした姿

 

 

生気がなくなりぼんやりとした感じや
そのままの表情でつーっと涙をこぼすシーン
これまで生きてきた道のりが
すべて醸し出された徳江さんそのもの

 
涙と言えば
千太郎さんは2回泣くのだが
こらえてこらえて
絞り出すように震えて涙をこぼした
ずっと泣けなかったんだろうな
後悔や情けなさや複雑な感情が
涙となって出てきたような
頑なだった千太郎さんがあたためられ
溶けてゆくはじまりのような涙だった
撮影は「よーい スタート」ではなく
「ほな、どうぞ」で始まったそう

 

 

 

徳江さんと千太郎さんが
ぼそぼそしゃべっていたら
カメラが回っていて

 

 

 

「もう撮ってるみたいですよ」
「そうみたいですね」
なんていう会話も残っているそうだ
70時間カメラを回して撮った映像から
「あん」は生まれた

 

 

 

月や桜や太陽の光や
少女たちのおしゃべりやこどもの声
あまりに普通に撮られていて
自分もその街で生きているような感覚になった
千太郎さんのどら春がある街で
わたしも同じように桜を見上げ
あの光を浴びているような感じ

 

 

 

そんな当たり前の日常に
こんな人たちがいるんですよー

 

 

 

いろんな人たちと一緒に生きているんですよー
…そんなことを教えてくれる映画

 

 

 

小豆を愛おしげに扱う徳江さん
その徳江さんを大事にする千太郎さん
観ていてホッとした
ATMやエスカレーターで
ゆっくりな人にイライラして舌打ちが
聞こえてくるようなこの頃だから

 

 

 

持っていたあたたかいものが
誰かによって扉を開かれ流れ出す
ふたりはお互いにそうだったのかな
誰かの死に出会うと
今生きていることの素晴らしさを思う
あっけなくいなくなってしまう人を見送ると
悩んでいることも苦しんでいることも
なんて素敵なんだろうと思う
精一杯生きているって本当に輝いている
本人はその時どんなに辛くても
どんなに情けなくても

 

 

 

徳江さんはその両方がわかるひと
辛そうな千太郎さんにそっと近づいて

 

 

 

「生きてるっていいわね」
「若いって素晴らしいわね」と
声に出さず彼に伝えている

 

 

 

徳江さん ちゃんと伝わりましたね
千太郎さんのあの突き抜けた顔
ご覧になりましたか?
堂々としたお腹から出る声
聞こえましたか?

 

 

 

もう安心して見ていられますね
あん

 


 

2015.11  Ameba blog