希望はいつでもここにある やり直しも新しい一歩もいつでも可能「明日の食卓」「名も無い日」「やすらぎの森」*2021年6月に観た映画

今月は観たい映画がたくさん 見逃した映画も何本かあり

レクチャーを受けたり、オンライン舞台挨拶も見られた

日本・アメリカ・東ドイツ・北マケドニア・カナダ・フランスと

世界を股にかけた1ヶ月でした

  • 明日の食卓
  • アメリカン・ユートピア
  • ハイゼ家 百年
  • 名も無い日
  • ブラックバード 家族が家族であるうちに
  • やすらぎの森
  • ペトルーニャに祝福を
  • ロミオ+ジュリエット
  • クルエラ
  • ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから
 明日の食卓

「菊とギロチン」の瀬々敬久監督作

豪華キャストでサスペンス仕立て

家族、その厄介で愛しいもの、女性の大変さ

”いい子”って危険やなー

菅野美穂の振り切ったブチ切れた母の怒鳴り声と

どこか狂気の漂う目つきは凄かったな

それでも子どもたちがいない生活など考えられないと

幼い子どもたちに語るシーンには涙が溢れた

そこに居場所がない夫が黙って出て行くのもわかる気がした

高畑充希のアルバイトの掛け持ちで何とかやってるシングルマザー

母の気持ちが伝わらない、子どもは子どもで

「自分の存在が母を苦しめているんちゃうか」と思ってしまう

現代の世知辛さもリアル

頑張りすぎてる”おかん”もありがち

愛情ってありがたくて重たいのも、めっちゃ出てた

尾野真千子の夫は仕事だけ、後は任せた!的なありがちな家族関係

”いい子”がある日豹変する・・・これもどっかで聞いたナー

つくづく、女は逃げられへんのよね 男は逃げようがある

家族の脆さが露呈した時

how toではなく、どんなにみっともなくても母の心の叫びが

「明日」という希望を見出す

3人の少年たちも、とっても熱演

公式サイトの3人の女優トーク、面白いのでぜひ

明日の食卓 公式サイト

原作、おもしろいらしい

アメリカン・ユートピア

予告編からしてワクワクやったけど

映画館でこんな素敵なショーを観られるなんて!

音楽も素晴らしいが演出も素晴らしい

シンプルな衣装 そして裸足(まるでユニフォームのようにみんな一緒)

コードレスの楽器(まるでマーチングバンドのように楽器を持って歌い踊るバンドメンバー)

メッセージ性のあるステージ

ジェンダーもいろいろ、肌の色もいろいろ

それぞれがメインの楽器、それ以外の楽器、コーラス、ダンスなど

多くの役割を持って、舞台で全てを発揮しているところがすごい

移民、BLMなどメッセージもあり

こうした社会的なテーマを無視して生きるのは

目を閉じ思考停止しているって事なんやなー

「生きてる」って素晴らしいね

こんなショーが日本にいて観られるなんて!

スパイク・リー監督作

アメリカン・ユートピア 公式サイト

ハイゼ家 百年

東ドイツの映画はわりと観てきたつもり

ドキュメンタリーで3時間38分!予告編に興味が引かれる 

行こうと思った日にレクチャーがあると知ってGo

モノクロの貨物列車や車庫?現在の東ドイツ?

まるで地震後のような道路の映像をバックに

淡々と日記や手紙の監督自身の抑えた朗読が続く

映像と内容がどう関係しているのか?理解できず

終わってから渋谷哲也氏(ドイツ映画研究 大学教授)のお話(オンライン)で

とても緻密に組み立てられた映画であることや

トーマス・ハイゼ監督はこういう人だという話を聞いて

もう一回観たいなーと思った

ハイゼ監督の祖父と祖母の時代からの様々な資料が元になっていて

難解なところもあるんやけど

ハイゼ家を通して東ドイツの歴史を辿れる

レクチャーのあった日でもあり満席

こういうチャンスに乗っかると理解が深まり世界が広がる

ハイゼ家 百年 公式サイト

 名も無い日

冒頭のシーンは日本だと思わなかった

タイ?アジアのどこかだと思った

永瀬正敏さん、オダギリジョーさん、今井美樹と聞いて

これは観なければ、と思った

樹木希林さんが日比監督の事を語っていて

聞いた事がない監督やのに何でやろ…と

以前観た「エリカ38」の監督だった

名古屋弁を話す登場人物たち、映画映画してない場面の数々

家の中も街も普段着で何ともそれが良かった

親友の子どもとのひと時や同級生とのやりとりなど

ひとりの人間の”ふくらみと熱”が2時間の中にしっかりあった

公開初日でオンライン舞台挨拶を楽しみにしていた

監督と3人兄弟が登場(皆さん、いい感じで力が抜けていてオシャレでした!)

監督自身の実話を基にした映画と知り衝撃だった

兄弟たちの家もご実家を実際に使っての撮影

ラストの手紙も本当のものを使われた、と聞き

いやはや、驚いた

金子ノブアキさんが良いこと言おう、みたいな

うまく話そうとせず、ゆっくり自分の言葉で感じた事を伝えようと

されていたのに、とても感心した

一番、力みも気負いも感じなかったのはオダギリジョーさんで

難しい役どころだったと思うが、淡々としていて正直だった

そして一番個性的でファッショナブルだった

長年ファンの永瀬正敏さんは相変わらず謙虚で

「みんなでつくる」「自分もその中のひとり」というスタンスが

オダギリジョーさんからも尊敬される役者さんなんやろな

舞台挨拶に熱が入ってしまった…

登場人物皆さん素晴らしかったが

同級生役の大久保佳代子さん(お笑いの人)が

とても良い味を出していた、と特記しておく

名も無い日 公式サイト

ブラックバード 家族が家族であるうちに

ケイト・ウィンスレット スーザン・サランドンと聞いて

魅力的な顔ぶれやなーと思った

予告編でケイトは「アンモナイトの目覚め」より痩せたように見えて

役によってからだをコントロールしてる?と、そこも興味があって

安楽死が合法な州もあるのか、という驚きと

死が迫っていて自分で死に方を決めるって

わたしもそうできたらなー

クリスとアナは微秒な状態の関係ながら

アナを支えるつもりで同行した事や

ジェニファーに本当の気持ちをそのまま伝える自分に嘘がない姿勢

そしてリリーの決心を心から支持するとはっきりしていて、とても好感を持った

ポールとリズの関係を自分が頼んだというリリーの言葉に

最初は嘘だと感じた 娘たちの手前そう言ったのだと思った

リズとリリーの会話を思い出すと、本当だなとわかった

人と人との関係の「こうであったら良いな」は

人によるのではないだろうか

複数の人を同時に同じように愛せる人もいるみたいだし

それをパートナーがOKとするなら、他人が口出しすることではないだろうし

最後が本当に美しかった

自分が決めた事でも「怖い」と言ったリリーもホンマの気持ちやろうし

愛する人たちの温もりを感じながらの旅立ちはうらやましくもあった

最後に疑問

「ブラックバード」というタイトルの意味がわからない

クロウタドリの別名だったりビートルズの曲にもあるが

ブラックバード 家族が家族であるうちに 公式サイト

やすらぎの森

カナダはケベックの深い森に

お年を召していて、それぞれ訳アリ(訳ない人なんていいひんけど)

うらやましいような暮らし

空気感が伝わる映像で湖で仲間や犬と泳ぐシーンは

見ているこちらまで気持ちが良い

いくつになっても生き方は自分で決められるねんなー

イヤなものは「イヤ」と言えばええのやわ

死に方やタイミングまで思い通りに…というのも

わかるような気がした

それぞれの傷や後悔や哀しみを

絶妙の距離で感じながらもそっとしている

様々な人生がある

3人の男たちがいい顔をしていて

ギターを弾いて歌うトムなど”やんちゃさ”を残しているし

映画が始まってすぐ死んだテッドも全編通して存在感がある

メインキャストの4人+2 が丁寧に描かれていて

単純な癒し・再生物語で終わっていないところが

素晴らしかった(女性監督なんやって)

マリーを演じたアンドレ・ラシャペルさんは

この映画が遺作となったそう

自らを重ねられた部分もあったのだろうなー

不安定な精神状態の表情、言動から

初めての体験におっかなびっくり足を踏み出す感じ

とてもフレッシュだった

年齢的なものだろうけど

10代20代の人が主人公のものより

こうした大人のテーマのものがしっくりくる

やすらぎの森 公式サイト

ペトルーニャに祝福を

ベッドに朝食が運ばれ、寝転んだまま食べる冒頭シーン

一体どんな主人公なんだろう?

彼女が取った行動に世間が大騒ぎになる

「女のくせに」「女は穢れている」「女は取れない」

段々、この映画のテーマが見えてきた

母親が32歳の娘に向かって「24、5と言いなさい」とか

なぜ女が取ってはいけないの?と言ってたレポーターの言動が二転三転したり

事件を追いたいレポーターが娘のお迎えで夫と揉めたり

”女の生きづらさ”が端々に出てくる

彼女の父は素晴らしかった

いつでも彼女の味方やった

彼女のすべてを肯定し、物事をちゃんと見ていた

そんな事を学んでも就職先はないよ、と

就職先があるような仕事につながる勉強をしろ

と言わんばかりの世の中

やっぱり違うよね

学びたい事があって、その先に学びが生かせる世界があるはず

そうでないのは健全な世界ではないねんや

ラストの彼女の言動に驚いた

わたしならお守りのようにしただろうなー

ペトルーニャに祝福を 公式サイト

ロミオ+ジュリエット

午前十時の映画祭企画

1996年か・・・当時観たけど、観たい!

これって、当時の私にも出会えるねんナ

シェークスピアって、正直辛気臭いし意味わからん

この映画はそのハードルをまず飛び越える

ディカプリオやアロハシャツ、銃、メキシコが舞台!?

だけどセリフはシェークスピア(噛み砕きなし)

ふたりの出会いから水槽やエレベーター、プールなんかを

うまく使って動きのあるイキイキとしたスピーディな展開

最後の警察署長の「ここにいるすべての人が罰を受けたんだ」

あれがビシッと締めたなー

まだ青年のディカプリオは魅力的だし

ジュリエット役のクレア・デインズの低音で泣いたり

涙でグジャグシャ顔も現代的なヒロインで好演してる

ロミオの親友役が黒人だったり、メキシコで撮っているせいか

白人以外(ロミオの運転手役の青年はメキシカン?)の人たちが

結構出ていて、あぁ、この頃から時代は静かに変わっていたんやなぁと実感

クレア・デインズは、その後何に出てたんやろと調べてみて

雰囲気がずいぶん変わってる・・・

これおもしろい ロミジュリの裏話

わたしはディカプリオと言えばコレですが・・・

「ロミオ+ジュリエット」の監督とディカプリオが後に再び組んだ映画

音楽がかなりイイらしい(観たーい)

クルエラ

めちゃくちゃカッコいい!

”ファッション”がキーワードで

そこに興味があってもなくても、斬新で楽しい!

モノをつくる人って時代を読んでるなー

”今”やから受け入れられやすいストーリーちゃうかな

ストーンと胸に落ちた

ワル感を前面に押し出してるけど

さほどえげつなくもなく、これくらい今の時代を生き抜くなら”アリ”でしょう

自分に正直に 感じたまま 

バランスがうまく行かなかったり

間違ってた ごめんね も、すごく今に必要やん

宿敵 バロネスにエマ・トンプソン

この人「ある晴れた日に」に出てなかった?

めっちゃええ人イメージやのに冷酷でファッショナブルな

いやーな女を実に堂々とやってはるやん

音楽がすごくいい!と評判で、うんうんとうなづきながら観てた

エマ・ストーンがぴったりハマり役

クルエラの演出が素晴らしくデザインもいい!

ストーリーも上手くできていて

いろんな人種、いろんなキャラ、いろんな体型の人を起用してる

矛盾を持ちつつ、さほどえげつないワケでもない主人公に仕上げ

さすがお金かけてる(笑)ディズニー!

クルエラ 公式サイト

エマ・ストーン コレめっちゃ良かった

エマ・トンプソンって・・・

「日の名残り」にも出てたんや・・・

ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから

得意じゃないフランス映画だけど

スルスルと受け入れられる展開

上手くいって結婚した後、ってのがミソ

ちがう次元に入ってしまう?ってヤツ

ふたりの高校時代のもっさりした感じが笑える

立場が逆転して、なんとか元に戻りたいラファエルが

オリヴィアの好きなモノ・コトを話す時の愛しそうな表情

そして側にいる人でなければ絶対知らない彼女の良さを知っている口ぶり

離れてみて初めて、とか 失ってみて、とか

相手の愛情を当然化していて自分の傲慢さに気づく

・・・人間ってやっぱり経験しないとわからへんのかも

ラフ役、オリヴィエ役が本当にイキイキしてコミカルで魅力的

なぜか卓球が何度も出てきて、フランス映画っぽくない(笑)

最後は元の世界に戻るのか?と思えば・・・

エンドロールでその後らしいシーンが出る映画も

結構増えてきたけど、これはなし(ちょっと残念 観たかったな)

ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから 公式サイト

音楽が素晴らしかった映画

・アメリカン・ユートピア(生のステージを観たい!)

・ロミオ+ジュリエット(音楽も現代っぽくって盛り上がる)

・クルエラ(めちゃくちゃかっこいい)

「今」を感じる映画

・明日の食卓(現代の生きづらさ、女性の大変さ)

・ペトルーニャに祝福を(女性の生きづらさ)

見逃した映画は・・・

「旅立つ息子へ」

「イージー・ライダー」など

今月4時間近い映画を固い木の丸椅子で観たせいか

シートが楽な映画館を書いておく

ぶっちぎりでアップリンク京都(どのシアターもシートが素晴らしい座り心地)