今月は・・・
何と言ったらいいのか・・・
濃い映画の連続でひとつひとつが、いちいち重い
「狐狼の血」もかなりハマって
Youtubeでいろんな映像や監督のお話も聞いたし
女性の強さにもかなり打ちのめされた
タイトルに挙げた作品以外も
涙が滲んだりしばらく反芻したり
いい映画ばかりの充実Septemberでした!
- 狐狼の血 LEVEL2
- プロミシング・ヤング・ウーマン
- サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)
- 少年の君
- 仁義なき戦い
- その日、カレーライスができるまで
- ミッドナイト・トラベラー
- ショック・ドゥ・フューチャー
- カブールのつばめ
- アイダよ、何処へ?
- 夕霧花園
- ブレッドウィナー
狐狼の血 LEVEL2
日岡の変化の感じがエスカレートし過ぎず
大上の死後3年という時間が感じられた
それにしてもすごい圧!全体から感じた
上林というモンスターは誰にも止められなくて
彼自身も「どうなってもいい」と思ってる
そういう人って”怖いもの無し”なんやな
虫ぐらいな感じで人を殺し
残虐シーンはちょくちょく出てくるが
ギリギリ直前まで見せて後は想像させるとか
記録として聞かせるとか、その辺りのバランスが良かった
残虐的な映像ばかりを並べると
上林の生い立ちの悲しさや日岡とチータ達の信頼関係などが
消されてしまうんろな
日岡の恋人役がスナック?のママでもあるんやけど
貫禄不足、ママには見えへん
中村梅雀さんが日岡の相棒役で
あの見た目そのままのキャラクターやったから
わたしもうまく騙されてしまったー
結局、管理官の巧妙な日岡潰しやったんかな
前作を観ていなくても話については行けるが
観てた方がより楽しめると思う
鈴木亮平さんの桁外れのモンスターぶりに引いた(笑)

前作(LEVEL2から観てもわかりますが、前作を観るとさらに楽しめます)のDVD

プロミシング・ヤング・ウーマン
すっごい映画観てしもたー!
これも町山さんの解説 聞いてたんやっけ
ちょっと前やったので、予告編を見て「きっとこれかな」で観に行った
めっちゃいろんな賞をもらってはるのやけど、納得!
性暴力に声を上げ始めた女性達や
おかしな判決などの流れに沿う映画
彼女が夜な夜などんな鉄槌を下しているのか
はっきりとは描かれないけど
彼女は「復讐」に取り憑かれている
自分の人生を歩まず、って言うか
あれをそのままにして歩めなかった正直なひと
ライアンとの恋に前向きになるのがちょい早すぎないか?
と思ってたら・・・
ま、ものすごいブラックですわ
え、そうなりますかの連続です
エンドロールが流れて客席なんとも言えない雰囲気やった
わたしが彼女やったら、ここまでできひんかな…
そして反省している弁護士を許す事も彼女みたいにできひん
keyはありとあらゆる事態を想定しての彼女の行動
山の中に漂う霧?と思えば、それは煙
何の煙?---是非、観て下さい
サマー・オブ・ソウル
(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)
すごいライブ行ってきた!NYで!
って感じのライブドキュメンタリー映画
しかもシネコンのDolby Cnemaで超豪華なサウンドと映像
(それだけのお代でした)
あの時代背景の熱気、人々のエネルギー
アーティスト達の熱い熱い歌とメッセージ
よくFMで流れてるあの曲はこんな歌詞やったんや!とか
こんな人たちがこんなパフォーマンスしてたんや!
1969年 キング 牧師やマルコムXの暗殺
ヴェトナム戦争(黒人は最前線に行かされた)など
歴史的な出来事も重なり
人間扱いされていなかった彼らの苦しみや怒りが
大きく時代を動かしていたけど
今も同じ状況なのがガックリくる
ゴスペル、キューバ、アフリカ、メキシカン、ソウル
いろんな音楽やスタイルが入り混じり
憑依したかのようなダンスが浄化と癒し、というコメントが入る
どの音楽もその国の人々の魂から溢れ出たもの
それが伝わる映像と音と熱のある演奏でした
こっちまで熱くなる、ライブに参加してるかのようなすごい映画
サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)公式サイト
少年の君
「ソウルメイト 安生と七月」 のデレク・ツァン監督と
中国の人気女優チョウ・ドンユイのタッグ
そこにアイドルから演技派へ、イー・ヤンチェンシー(この彼がまた良い!)
中国なのに
ものすごい受験戦争と経済格差、ストリートチルドレン
ある意味、日本より壮絶かも
いじめられている友達を相手にしなかった彼女が
いじめられる側へ
この”いじめ”が殺人事件へと転がってゆく
お互いバカにし合い何の接点もないかのようなふたりが
お互いの存在が傷ついたり孤独だったりする気持ちを
温め励ますようになってゆく過程が切ない
彼も彼女も泣くシーンが多い
彼の涙は今まで誰にも言えなかった事で
胸が痛くなる
いじめ問題に警察が介入しているが
守り切れるわけないやん
後半の警察とふたりの闘いになってゆく感じは
なんか違うんちゃうか、と思わずにはいられなかった
これで良かったのか?のような男性刑事の描写は
わたしの心情だった
いや、しかし 29歳のチョウ・ドンユイがうまい
彼女の表情で相手の痛みや複雑な気持ちが伝わる
地毛を丸坊主にする心意気も大したもの
いじめに関する中国の取り組みの解説を入れて
中国当局の検閲をパスしたらしいが
現代中国の一コマを見られるという意味でもかなりの力作
面会所で何も言わず目だけでコンタクトして
涙を流す2人の場面がうつくしかった…

仁義なき戦い
「狐狼の血」が語られる時に出てくる名作らしいが
ヤクザ映画をお金を出して観ようとは
夢にも思わなかった
ヤクザ映画は「切ったはった」の世界で
やたら残虐で血の気の多い、変な男の世界というイメージだった
それが、いつも紹介する町山さんのラジオで
チラッと語られて観てみようと思った
冒頭、広島に落とされた原爆のキノコ雲
戦後すぐの闇市のシーンから始まる
正義感の強い男性がヤクザの世界に入ってゆく
1973年の映画でエネルギーに満ち満ちている
冒頭での役者紹介に名・斬られ役
(「ラストサムライ」でトム・クルーズとも共演した)福本清三さんの
お名前を見つけた!
何かで読んだのだが、福本さんは大部屋俳優で無名だった当時
深作欣二監督は福本さんがどんな斬られ方をするかまで
ご存知だったとか(興味ある人は”ピラニア軍団”でググってみてね)
錚々たるキャストで主役の菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫、渡瀬恒彦
川谷拓三や田中邦衛も
すごいラストでこの後も続く終わり方
「代理戦争」「頂上決戦」「完結編」とある
残念ながら1作しか観られなかったが
スクリーンで観られて良かった

「狐狼」も広島、「仁義」も広島じゃけー

こうしてブルーレイのセットも販売されている名作
その日、カレーライスができるまで
斎藤工、企画・プロデュース作 リリー・フランキー主演
1時間弱の短い映画
ラジオを通してつながりを取り戻す夫婦
・・・この設定に痺れたー
ラジオのお題にメッセージを出したり
誰かのメッセージに立ち止まる経験しょっちゅうやから
大事なものをなくし心が空っぽの男性
孤独と後悔、愛が繰り返し繰り返し彼に訪れる
わかるなー・・・わかる
大事なものって、なぜか見失ったりなくすんや
わかちあえる人を、なぜか傷つけてしまうんや
けれど、やり直しのチャンスは来る
リリーさん ダメなおとーさん役多い(笑)
肝心な言葉はすぐに出ないし口数は少ないし
でも愛をいっぱい持ってるひと
そして、自分の過ちに気付けるひと
声だけの出演で神野三鈴さん
このひと、ホンマにすごい女優さんやー

ミッドナイト・トラベラー
アフガニスタンで映画をつくり
タリバンから死刑宣告を受けた監督家族が
逃亡する様子をスマホ3台で撮影したドキュメンタリー
ザフラとナルギスという可愛い女の子がいるんやけど
女の子はからだが大人になったら
誰かのお嫁さんになるしかない運命(アフガニスタンでは女の子には何の自由もない)
自転車に乗ることすら許されないから
彼女たちのお母さんも自転車に乗る練習するシーンがあった
アフガニスタンでは大人になったら?
女性は髪を見せてはいけなくてスカーフを纏うのね
ナルギスはお姉ちゃんでなかなかの美少女
きれいな黒髪のロングヘア
「スカーフをしたくない」と彼女が口にして
お父さんとお母さんが「自由にしたらいい」と言うシーンがある
「あかん」と言われると思ってた彼女が
嬉しそうに母親に抱きつく
こんな自由もない人が今、世界のどこかにいる…
日本の入管が難民を希望して来た人に対して
暴力を振るうだけでなく人間扱いせず
病気にさせたり死なせたりしている
どんなバックグラウンドがあって
他国に難民申請をしているのか
想像だけでも余りある世界の情勢
この家族が他国で「難民は出て行け」と暴力に遭った事もあり
子ども達が恐怖で泣き「もう外には出ない」と言ったり
不潔な難民収容所で幼い姉妹が虫に刺されて顔や手がボコボコになってたり
こんな世界で日本は一体何やってるんや?
自国の国民すら棄民状態で
新首相は?とお祭り騒ぎをしているが
今の日本で20代の女性の自殺率が最も高いのだとか
(映画を観て、聞き直すと町山さんが観てる映画と内容が微妙に違う感じがする。町山さんが観てる映画はもっとショッキング)
ショック・ドゥ・フューチャー
”うずうず”した!
「今すぐ帰って制作したい」と言うアナの気持ち
めっちゃわかる!
インスピレーションの種みたいなものはあるのに
イキイキと動き出さないジレンマ
新しい機材に出会って
インスピレーションでどんどん歌詞を書いて歌うクララに出会って
アナが夢中になって世界へと深く入ってゆくのんも、めっちゃわかる!
プロの世界の大物に認められず悔し涙
お金を貸してくれたり励まそうとしてくれる友達
そして新たに出会うチャンスのかけら
音楽に夢中の女の子のある1日なんやけどキュンキュンする!
「女はこれだから」とか「美人なんだから」とか
「見返りないの?キスくらい」とか
まぁーバカにしてんのか、ムカつく男性の言葉の数々
そやけどアナを理解し支えてくれる友達も男性だったりする
1970年代、エレクトロ・ミュージックが世界を変える前夜
熱い熱い音楽に魂を奪われた女の子の素敵な物語
ショック・ドゥ・フューチャー 公式サイト
カブールのつばめ
アフガニスタンの首都・カブール
今、どんな状態なのかが具(つぶさ)にわかる
状況は酷いけれど美しいアニメーション
わたしはアフガニスタンの事、何も知らなかった
女性は夫以外の男性の前ではブルカを着用しなければいけない
白い靴を履いてはいけない
タリバン側に協力している人は優遇されている
社会的に女性を人間扱いしていない
・・・こういう事が物語から伝わる
かつてのカブールの賑わいは遠い記憶となり
建物という建物は半壊状態
本屋や大学はめちゃくちゃに荒らされている
(自由がないって、こういう事)
モフセンの良心の痛みやズナイラの積もり積もった怒り
アティクの妻のアティクを見抜いて取った行動
彼女はとことん献身的で、ひとりへの愛ではなく
もっと大きなものを見据えて生きたと思う
カブールのつばめ 出町座での紹介(ここから公式サイトへ。尚、日本向けの公式サイトは無いようです)
アイダよ、何処へ?
映画を観て家に帰り着いたら
恐怖と緊張でからだがガチガチになっていたようで
大きなため息と一緒にすべてが抜け落ちた
ボスニア紛争でのスレプレ二ツァ・ジェノサイド
ほんの少し前、1995年の事だなんて
国連って戦争状態になってしまえば無力に等しいにゃ
その事実をこの映画で見せられた
やっぱり戦争になる前になんとか止めへんと、こんな事になるんや
国連保護軍に避難するため押し寄せた2万人の人々が映るシーンが強烈
侵略されるって、こういう事なんや!
3年半続いた紛争に疲れ果て、恐怖のあまりおかしくなる人も出てくる
男女は引き離され、復讐に燃えるセルビア人に
男たちの多くが処刑される
アイダの夫や息子たちの最後のあの静けさと沈黙の恐怖に震えた
最初から鋭いアイダの目つきが
さらに尖って痛いくらいだった
公式サイトのコメントにもあるように
こんな状態が今のアフガニスタンだと思うと鳥肌が立つ
戦争が起こらないようにするには、どうしたら良いの?
この夏、SNSで目にした質問
・選挙に行く事(軍事力を増強する立場の人を選ばない)
・世界中で武器の製造・輸出入を止める
・どんなに困難であろうと対話で解決する世界をつくる
…もっと考えてみたい


ボスニア紛争中に青春時代を送った
ヤスミラ・ジュバニッチ監督(「アイダよ、何処へ」の監督)の2011年の作品
夕霧花園
第二次世界大戦で日本が占領したマレーシア
現地の少女たちを連行した慰安所や
敗戦後、罪の重い日本軍人を処刑するシーン
などが出てきて言葉を失う
日本人とマレーシア人が引かれ合い愛し合うが
ラブシーンでマレーシア人女性が複雑な感情を見せる
殺人鬼・強姦魔の(劇中、彼女の言葉)日本人を
愛しながらも憎み足りない程憎んでいる姿に
同じ女性だけにわかる気がして胸が痛くなった
日本人庭師、彫り師を阿部寛が演じていて(しかも全部英語)
日本が何をしたのか、具(つぶさ)に見て聞いたであろう彼の秘めたる葛藤や苦しみ
を感じた
こういう歴史的事実が絡む物語を
アジアのキャストやスタッフで作り上げたなんて
とても画期的な事!
トム・リン監督は以前観てこれまた素晴らしかった「星空」の監督!
この「夕霧花園」は大阪アジアン映画祭でオープニングを飾り
大絶賛だったとか

ブレッドウィナー
「一家の稼ぎ手」という意味なんですって
アフガニスタンの家族を描いた美しいアニメーション
女性だけでの外出が禁止
買い物に市場へ行くのも男性の同伴が必要
銃を持ったタリバンが街中を彷徨き人々に因縁をつけ
暴力や連行…それが日常
これが「今」というから驚きだ
遠い過去から帝国の境界線付近のアフガニスタンは
常に戦火にさらされてきたと言う
海を見た事がないパヴァーナや友達
まだ幼い彼女が髪を切って男の子のフリをして
買い物に行き働く
学校で学ぶこともできず
将来の夢があっても、特に女の子は結婚しか許されていない
こんな希望がない状態はわたしなら耐えられない
パヴァーナは勇気を持って自分にできる事をする
それをわかってくれる大人も出てくる
お話は悲惨だけど、絵が美しくパヴァーナの意志を感じる瞳が美しい
危機的なアフガニスタンの状況での緊急上映
「カブールのつばめ」と合わせて
今月は濃すぎる映画体験の連続で
ちょっと疲れが出ました
「MINAMATA」の公開に合わせて土本典昭監督の「水俣」
ドキュメンタリーを観に行こうと思えばできたのに
見送りました
アフガニスタン、女たちの強さ・・・
この上に水俣病となるとキャパオーバー
「知らなければいけない事」はこんなにたくさんありますね
どの映画も素晴らしく
エンターテイメントを純粋に楽しむ
ドキュメンタリーやアニメで重いテーマを淡々と見せる
手法は様々ですが「あなたはどう受け取りますか?」と
どの映画からも問いを感じました
消化し切れない感じを残しつつ
また時間が経ってわたしの中に生まれたり育ったり
気づきがあったりするのでしょうね
10月も観たい映画が続々!