今月もキョーレツな多種多様な女性たちに出会う
みんな懸命に「自分」を生きてる!
悩んで もがいて ジリジリと前に進む
その姿は「みっともない」とか「カッコ悪い」ではなく
うつくしいと思う
今月は以下の11本を観ました
- 由宇子の天秤
- TOVE
- ミス・マルクス
- 誰がハマーショルドを殺したか
- サウンド・オブ・メタル
- コレクティブ 国家の嘘
- いとみち
- 青葉家のテーブル
- 偽りの隣人
- グレタ ひとりぼっちの挑戦
- 先生、私の隣に座っていただけませんか?
由宇子の天秤
どっち側か、決めへんとあかんのやろか
「どっちでもない」とか「いちドキュメンタリー作家」と
彼女は言ってたけど
畳み掛けるように次から次へとコトが起こる
制作中のドキュメンタリー
家族、家業の学習塾に来る高校生
全部ちがうはずなのに底の底でつながってる
冷静でクール、口数の少ない由宇子
何もかも素早く判断し動く
それでいて優しく温かい、人の気持ちに敏感
取材して「本当の事」をつかんで
それを作品に仕上げる時に入る横槍
「メディアの責任」から逃げる会社側
事実を伝えたいけど正直に明かせば
メディアが飛びつき
普通に暮らせないほどの嫌がらせを受ける
本人だけでなく家族や仕事先まで
その残酷さ
萌の本当の姿や気持ちがわからないまま終わった
最後がなんとも言えない終わり方やったけど
エンドロールが終わって明かりがつくまで
最後の場面の街のざわめきが聞こえていて
何が起こっても街はいつも通り
日常があるようで
その日常が穏やかであるとは限らない、その怖さを残す

TOVE
ムーミンを生み出したトーベ・ヤンソンの半生
芸術を押し付ける父との確執が
彼女の自由を求める心に火をつけたのかも
戦火の下でもムーミンを描いていたトーベは
一体何が描きたいのか、自分でわかっていなかった
ずっとムーミンを描き続けていたのに
彼女の激しいダンスが何度か出てくる
彼女の中にあれだけ激しく熱いものが
出口を求めていたんやと思う
ムーミンだけの人ではなく
舞台や小説なども手がけたらしい
そこを理解し応援してくれたのがヴィヴィカやアトスだったのだろう
その後生涯を共にしたトゥーリッキも
ムーミンの原作者が女性だと思っていなかった
あの独特の世界観とユニセックスな感じ
トーベそのものやんか
あの時代に最先端を行ってたんや

ミス・マルクス
パンクロックから始まりパンクロックで終わる
カール・マルクスの6人目の末娘エリノア
政治的信条は強かったものの、感情面では非常に脆かったらしい
「資本論」の翻訳をする程の才女が
現実に打ちのめされるシーンがたくさん出てくる
「理想と現実」これがKey wordかも
恋愛は理屈では割り切れないもの
反対に言うと理屈で割り切れるなら恋愛ちゃう
・・・ぐうの音も出ない真実
エドワードを愛し結婚したものの
現実に生きていないエドワードに振り回され
愛情との矛盾に引き裂かれるエリノアの気持ち、わかるなぁ
尊敬する父の愛情が母だけでなかった事実を知って
取り乱す場面もつらい
母・父・姉の子どもの面倒をみてきて自分の人生を歩かせて、と
エンゲルスやへレーネに話す場面も胸が詰まる
資本論の一節が間あいだに語られる
言葉が現実と結びつかない感覚
要は「難しい」のね
理想は大切、ビジョンも必要
そやけどエリノアが夫との関係に悩んだように
ひとりずつテーマはちがう
イプセンの「人形の家」のように
男女の関係も社会と無関係ではないから
あのパンクロックで激しく踊るエリノアで
彼と距離を置くなり
彼のした事は彼に責任を取らせるように動けば良かったのに
それができないのも”愛情”であり”弱さ”
そういう事を乗り越えられてこそ
関係は深まったかもしれへんけど
残念な人をなくした
これは人類にとっての残念かもしれへん

誰がハマショールドを殺したか
まず、コレを見て欲しい
いやー、これまたすごい映画やった!
ところが・・・
ところが・・・
わたしの前には背の高い紳士が座り
またその人がよく動く・・・
そしてわたしは強い眠気(笑)
いやー、しかし知らんかったな こんな事件があったなんて
アフリカを植民地にしておく事は
これほどおいしい話なんやな
日本にも闇はめっちゃ存在してるけど
世界の大国の闇の深さや恐ろしさを知ると
人間のような顔貌をした人間でないものがいると確信する
ドキュメンタリーやけど構成がうまくてユーモアもある
サウンド・オブ・メタル
〜聞こえるということ〜
つい最近、聴覚障害のひとの世界を描いた小説を読んでいて
これはそういう映画やと知っていて観に行った
そやけど、巡り合わせを感じた
突然、今までフツーやった事がフツーでなくなったら
それが自分やったら、どう感じる?どうなる?
聞こえなくなったら、世界は全部変わってしまう
それを受け入れるまでのツラさ、葛藤
しかもアルコールや薬物の中毒も抱えてたりして
この映画はルーベンの聴覚状態を疑似体験できる
高額なお金を払って人工内耳を入れる手術を受けるけど
以前とは全然違う聞こえの状態
彼女はルーベンを本当に愛してた
ルーベンも彼女を本当に愛し求めてた
人工内耳を入れて一定聴覚を取り戻したけど
ふたりはわかってしまった もう以前のように行かへんと
気持ちは変わらないのに
もう一緒にいられない事に気づいたシーンは
つらいのに秀逸やった
わたしのひとつ空席を開けた隣に多動なひとが座った
めっちゃ気になった
そやけど「これがいろんなひとが生きる世界」やと思った
サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜 公式サイト?

読んでいた聴覚障害がテーマの本
シリーズになっていてかなりの人気です
どハマりして、続編も読了
コレクティブ 国家の嘘
「由宇子の天秤」でも報道の姿勢がテーマのひとつやったけど
これはルーマニアで実際に起こった事件のドキュメンタリー
発端となったライブハウスの火事の映像まで出てくる
凄まじい火事やった(生き残ったテディの姿を見たらどれ程の火事かわかる)
助かった人たちがなぜか入院先の病院で
次々に感染症で死んでいった
国をあげての腐敗が明らかになってゆく
恐れず事件を暴いてゆくのがなんとスポーツ新聞の記者
いろんな記者会見の場が出てくるが
女性の数が多いのに驚く
それまでの保健省大臣が辞任した後を
”患者の権利を守る活動家”が後を引き継ぐが
そんな人が大臣になる事にも驚くし
かなりのインテリジェントの彼が底知れぬ闇に溺れそうになる
でもこれだけのドキュメンタリーを撮る監督にオフィスを開放するあたり
良心がある人である事は救い
医療関係者が次々と内部告発する勇気も涙出そうやった
希望を感じつつ、闇の深さに頭を抱える
ものすごく唐突に映画は終わる
日本だって、このくらいやろうと思えばできるはず
わたしら国民がもっと怒れば
一個、質問 誰か教えて
ガゼタ紙の社内で会議室のようなスペースに入る前に
携帯電話を床に置いて入るシーンがあるけど、なんで?
GPSがあるから?
あそこで録音してる訳ないよね?

い と み ち
いとちゃんがもどかしくて前半は辛気臭かった
後半はなんでもない場面でもハラハラ涙が流れて困った
実にいいタイトル!
主人公が「いと」、そして津軽三味線の弦を連想する
孤独で時間を持て余すいとちゃんが
思い切って気になる子に声をかけて友達になったり
おっかなびっくりメイド喫茶のアルバイトを始めたり
これ!という明確なものでなくて、ええねん
「この人たちと一緒に働きたい」
「あの子と喋ってみたい」
行ったり来たりしながら動き出すいとちゃんの道
横浜聡子監督が映画後にアフタートーク
10人ほどの観客から質問が次々出て
この映画6回目という人もいた!
横浜監督、いとちゃん役の駒井さんが青森出身で
オール青森ロケ、バリバリの津軽弁
青森空襲の事や津軽三味線の皮貼り?っていうのかな
そんな貴重なシーンが無理なく出てきたりして
みんなでピクニックは浅虫海岸
いとちゃんが父と登ったのは岩木山
青い森の国はめっちゃ美しかった
そしてラストシーン、いとちゃんの手を振るシルエットが
これまた美しくこころで何度も再生される
本でも映画でも中学生や高校生が主人公の話は
自分の現実と遠すぎて気持ちがのらない事が多くなった
そやけど、全部が全部そうじゃなく
この映画は胸がふるえて、そんな自分が嬉しかった
「生きてるってええなぁ」としあわせな気持ちで帰ってきました

青葉家のテーブル
北欧、暮らしの道具店初のオリジナル映画
インテリア、キッチン用品、服、お洒落感いっぱい…
やや現実から遠い感じ正直あった
有名な母を持った優子の”もがき”がわかる
春子と知世の微妙な感じも、めっちゃわかる
そういう人間関係が丁寧に描かれる
何かが欲しくて
何かをあの頃に置いたままにしていて
素直になれなくて
仕事をしていたら、日常はもっと慌ただしいし
あんなにお家の中をきれいにキープできひんし
あんなお店みたいなごはんも作れへん
そやけど、そういう生活にどこか”オシャレ”があると
ワタシはとっても豊かな気持ちになる
それはもしかしたら「ココロの余裕」ってヤツかなー
優子が画塾で友達になった与田ちゃんが
すーごく魅力的やった
めいこの関西弁がキャラクターにぴったりやった
偽りの隣人
韓国映画はホンマ間違いなくおもしろい!
フィクションやけど、金大中氏を思わせる
1980年代の軍事政権下でのドラマ
と言っても、前半はコメディタッチ
イ・ウィシクのおとぼけぶりが見事
イ家のお手伝い役の女性もいいコメディアンヌっぷり
マヌケな2人の部下もあり得ない諜報員ぶり
ウィシクと隣人として付き合う中で
彼の人間的な魅力や人となり、考え方に
どんどん影響されてゆくデグォンがいい
いやーしかし、オ・ダルスは実に毅然として品のある大統領候補
堂々たる彼の言動に惚れ惚れ
笑って、ハラハラして、泣かされて
韓国映画は間違いない


韓国の民主化を描いた骨太映画2本
こういうホンマのことを映画にできる韓国ってすごいと思う
軍事政権から今の韓国にしたのは市井の人々…

グレタ ひとりぼっちの挑戦
グレタ・トゥーンベリ 今やこの名を知らない人は少ない
TVなしの生活を送るワタシには
グレタの言動が新鮮で眩しかった
学校で見た環境問題の映画で
摂食障害や鬱っぽくなる程の衝撃を受けたグレタ
この感性の繊細さにまず打たれた
環境問題は「なんとなく」理解しているつもりの
ワタシの浅はかさを鋭く突く映画で
気候変動は人や生物・植物を”殺す”の、わかってる!?
と揺さぶるようなグレタの言葉や感情やった
「言ってる事とやってる事がバラバラな人になりたくない」
肉や乳製品をとらず飛行機にも乗らずに
ヨットでアメリカへ向かう
それを支える友達・家族・仲間
アスペルガーと診断されても
彼女のコンディションが良くなってゆくのに
母が涙を見せるシーンがあった
グレタ、すごい!
確かにそうなんやけど、彼女が訴えている内容は
全部全部、誰もの身に降りかかってくる事
それをどこまで「自分ごと」として捉えるか
そこやねん
政治も経済も環境も
実は全部「自分ごと」やねんナー
そこが伝わらないもどかしさにグレタは時に辛くなる
映画のチラシに某有名映画コメンテーターのコメント
それがまさに「人ごと」
笑ってしまった・・・

先生、私の隣に座っていただけませんか?
イライラ、あれれ?、いや そやし何なん!?
最後まで何が何やら…
黒木華ちゃんに振り回された、って感じ
愛もあったし「ハッキリさせたい」もあった
でも何を考え、どうしたいのか
さっぱりわからない妻・佐和子
漫画と現実 リンクさせるおもしろさ
現実からヒントを得て仕掛ける佐和子
その仕掛け方がハンパない
結婚したからと言って「恋をしない」とは限らない
恋はするものではなく”落ちる”もんやからね
「プラスティック・ラブ」竹内まりやさんのカヴァー、軽くて良い
さほど計算してなさそーで
一番計算して あらゆる可能性を考えて振る舞いを決めた
そりゃ、そーやわな
10月は9月に引き続き、濃厚やった
もう1回観たいのが
「誰がハマショールドを殺したか」
「コレクティブ 国家の嘘」
「ミス・マルクス」
「由宇子の天秤」
眠たくて半分寝てたのもあり
ちょっと難解で、もう一回じっくり観たい
というのもあり
作り手の熱を感じられる作品ばかりやったなー