マイノリティって自分らしく生きている人 「Coda あいのうた」「流浪の月」「杜人〜環境再生医 矢野智紀の挑戦」*2022年5月に観た映画

こんな月も珍しく、アジアの映画ばかり観た

生きるすべての人が生き物が映画になる

生きてるって尊いねー

今月は以下8本を観ました

  • Coda あいのうた(米)
  • 杜人〜環境再生医 矢野智徳の挑戦(日)
  • ツユクサ(日)
  • 流浪の月(日)
  • メイド・イン・バングラデシュ(仏・孟・丁・葡)
  • バニシング(仏・韓)
  • 流浪の月(日)李監督と音楽の原氏のティーチイン付き
  • ワンセカンド 永遠の24フレーム(中)

Coda あいのうた

codaの意味を知ったのは、つい最近

この本がきっかけやった

映画の中で「DEAF」と出てくるが、その言葉を知ったのもこれ

この映画はフランス映画の「エール」をアメリカでリメイクしたもの

これは観ていた

なのでアカデミーを取ったと聞いても

あまり観たいと思わなかったのだけど…

音楽の先生の個性的で厳しく愛があるキャラ

ルビーのお父さんの無骨な漁師ながら愛がいっぱい(助演男優賞受賞)

ルビーのお兄ちゃんの突き放す愛

・・・多分、ワタシの受け止めも変化してるからなんやろけど

「エール」と違うのは本当のDEAFの俳優さんを使っている事

さすが女性監督!

家族の中で自分1人だけが”聞こえる”って、どんな事なのか?

疎外感と依存され度合いとか周りの目とか

ルビーの複雑さはよくわかる

一番ええとこで「聞こえない世界」を体験させる

きょろきょろと周りを見る父の気持ちがわかる

聞こえない世界にいる人はすぐ側にいる

ハンディを持つ人を「かわいそう」と見る人がいる

すごく違和感を感じる

それ上から目線やで、と思う

ほんなら、どうあれば良いのか?

ーここにも正解があらへんと思うねん

自分がハンディを持っているなら…と想像してみる

正解はなくても自分なりの答えを探す

その姿勢があるかどうかって

割と大きいんちゃうかな

ハッピーエンドの映画と共に

厳しい現実に苦しみつつ向き合う事で自らを癒してゆく

丸山正樹氏の「デフ・ヴォイス」シリーズを読んでみて欲しい

いろんなハンディを持つ人たちは周りにたくさんいて

「共に生きる」ってどういう事か

映画を「良かった〜」だけに終わらせない

Coda あいのうた 公式サイト

杜人〜環境再生医 矢野智徳の挑戦

瀕死のガジュマルを

水浸しの廃校のグランドを

ジャングル化した個人のお庭を

人と一緒に風を通し水を流してゆく

スコップでシャベルでユンボで

やわらかい表情がいつまでも残像した

土砂崩れを起こすからコンクリートで塗り固める

U字のコンクリート排水溝を作って水捌けを良くする

理屈に合った事かと疑問にも思わなかった

ここ10数年の大震災、豪雨被害を見ると

コンクリートなどはるかに超える自然の力に

ただ呆然として立ち尽くすだけ

矢野さんのお考えは学者からも理に適っているとお墨付き

彼の凄いところは災害現場に復興支援に入りながら

土砂で埋まった川の流れを取り戻し

川でないところに流れてきた水を元の流れに戻し

倒され流された木や岩を使って土留めを作り

水脈を見極め縦穴を掘り(大地の呼吸穴)

蛇行させた溝を作りパイプ(空気が通る)を底に敷き

その上に災害ゴミになる自然物を敷く(空気も水も通る)

一緒に作業する人が「もう風が通り始めた」とすぐに実感し

季節が巡ると息も絶え絶えだった木に花が咲く

日本列島、コンクリートだらけ

大地も人間と同じ呼吸をしている

コンクリートはその呼吸を妨げているから

あんなに酷い災害になる

この地味なドキュメンタリーが静かにヒットしていて

上映期間が延び観ることができた

初めての長編作となった前田せつ子監督の爽やかさ

(公式サイトの監督のコメントをぜひ)

全国で矢野さんの杜の学校が開かれているそう

ワタシも参加してみたい

杜人〜環境再生医 矢野智徳の挑戦 公式サイト

ツユクサ

航平の親友ってのが良いし、女3人仲良しってのもいい

淡々とした話のようで

女3人も航平も、みんな色々あってここにいる感じ

小林聡美が素のまま?って感じやけど

航平との別れのハグは親友というより我が子のようで

彼女の心の支えやったみたい

僕がいなくなっても、ちゃんと幸せになる?と言われて

彼女の心は決まったんやね

もう誰も愛さないとか、幸せにはなれないとか

勝手に決めて不幸に酔うようなヤツは知らん

篠田も自分にブレーキをかけてるし

いつまでもあの街にいられないのはわかるけど

あのタイミングで帰ったのが、わからん・・・

けれど、お互いに歩み寄ろうとしていて

いい予感がするラストやった

航平役の少年は「梅切らぬバカ」で忠さんを理解するあの子

今回も重要な役どころを伸び伸びやってた

これからが楽しみな役者さんやな

ツユクサ 公式サイト

小林聡美が膝行(膝で歩く)をしていて

合気道を知った

小林聡美 この映画でブルーリボン助演女優賞受賞

確かにちょっといつもと違う感じで印象に残ってる

流浪の月

文のあの静けさや覇気のなさ、孤独が疑問だった

からだもかなり絞ったんちゃうやろか…ガリガリやった

母との関係が大きかったんやろけど、すっきりしなかった

文だから更紗に気づけたんかもしれへん

孤独の匂いを感じたんやろうな

過去の事件が誤解されたまま

いつまでも2人に付き纏い逃れる事ができない現代の闇

事実は伝わらず好奇心を剥き出しにした”世間”が取り巻く

更紗も文も、もどかしいくらい言葉が少ない

それなのに2人でいる時はそれくらいが丁度良い

男女だから恋愛だセックスだと決めてかかるのは違うのだ

例えるなら同志、家族のような関係だってある

そっとしておいて、あげようよ

最近、”性”が人間が生きる上で

「子孫を残す」以外に大切で必要な事なのかに

ページを割いた小説を読んで

この映画でも”性”が大きなネックになっている

”性”が人をどれだけ左右するか

過去のトラウマで”性”に嫌悪感しかない人だっている

その反対の人もいる

そういう事を語り合える人と友達なり恋人なり親しくなりたい

そういうものであって欲しい

樹木希林さんのお嬢さん内田也哉子さんが出てはった

希林さん!?と見紛うようなそっくりなお顔に驚いた

脇を固める人たちも、皆 存在感バリバリ

流浪の月 公式サイト

李監督と言えば、この2作品

衝撃的すぎて忘れられへん

原作の吉田修一氏もすごいのだが

実はこれも李監督と思い出した

これも良かったよなぁ・・・

メイド・イン・バングラデシュ

ファストファッションを支える国バングラデシュ

原価はいくらなん?と思う値段の裏に

こんな世界がある

どこの国も女性の方が働き者なんやなー

一見、仲の良い夫婦のようで

夫は無職で妻に指示・命令・説教(主人公も「女に自由はない」と)

夜中まで残業して職場の床で雑魚寝にもびっくり

明るくなってから帰れ、にもびっくり

クーラーもなくオンボロな扇風機ですら仕事が終われば止める会社側

でも女たちは強い

ワタシには”喧嘩腰”に見える勢いで

「扇風機を止めるな」「残業代払って」「ふざけるな」と

自分達に権利がある事も知らず滅茶苦茶に働かされる女たちが

労働組合を作ろうとするプロセスを描く物語なんやけど

やっぱり”教育”って大事やなーと改めて

文字が読める・書けるは当たり前のようで

そうでない国もまだまだあって

その力があって本や新聞を読んで知識を得る事が

自分を強く豊かにする事なんやなー

そういう学びと、ぶつかり合う人間関係の中で

相互理解や信頼の形成なんかの体験的学びが合わさって

賢く強くなってゆく様子に胸が痛くなる

本音と建前を使い分ける相手にしたたかに詰め寄る主人公

ようやく希望が見えた主人公の表情が素晴らしく

”人間であることの誇り”って、きっとこういう事なんやね

ワタシはバングラデシュの女たちを搾取してへんかな

服の表示を見返してみる

メイド・イン・バングラデシュ 公式サイト

バニシング:未解決事件

フランス人監督が韓国で韓国人キャストと

世界的に活躍するウクライナ人女優オルガ・キュリレンコらと

タッグを組んだ映画

やっぱり韓国映画界の実力が世界レベルなんやなー

実に無駄のないスピーディーな展開であっさりし過ぎ?とも感じられた

臓器売買と聞くけど実際どういうものなのか

そのシステムの流れが怖かった

一番怖かったのは、一見どう関係があるの?という一家庭で

高齢の母がテレビを見ている後ろで

家政婦が息子に薬を嗅がされ拉致されるシーン

高齢の母は全然気がつかない

・・・日常に潜んでいる犯罪の象徴的な見せ方!

臓器を取り出す事に罪悪感と恐怖を募らせるドクターと

通訳の女性が夫婦という関係も話が絡み合う大事なポイント

法医学者の過去を幻想的に見せるのもうまいなぁと思わされた

ロマンチックなシーンもあって

ラストの音楽などちょっと日本っぽい雰囲気

彼女を誘い歩き出した先に見えてくるナイスビューを徐々に見せる

珍しく1日に2本観た日

バングラデシュのあの街からソウルの闇世界へ飛んで

世界を股にかけた気分

バニシング:未解決事件 公式サイト (映画のチラシをそのまま載せただけで見る価値なし)

オルガ・キュリレンコの代表作は007のよう

ワタシが過去に観てたのは「スターリン…」

たくさん登場人物がいて全然印象に残ってないが

流浪の月

1回目を観た時にティーチインがあるのを知って

1週間開けず2回目の鑑賞

李監督、来京なんてチャンス見逃せません

やっぱり2回目は前回わからんところがわかったり

亮やあゆみのバックグラウンドや心情がより伝わり

文と更紗の言葉にならないお互いへの信頼なんかを感じた

ティーチインを聞いて

俳優さん達が上手だから、ではなく

もがき苦しんだ果てに出てきた表情や台詞や言い方なんやろうな

ちょっとやそっとでOKにはならへんかったやろうし

2時間半と長時間の映画、脚本は監督

原作を読んでみたくなった

流浪の月 公式サイト

ワン・セカンド 永遠の24フレーム

久しぶりの中国映画 しかもチャン・イーモウ監督作

オープニングもエンディングもどこまでも続く砂漠!

しかも主人公らは歩いて移動する

名作「ニュー・シネマ・パラダイス」のような

映画への愛がテーマになっていて

文化大革命時代の中国の人々にとって

映画が特別な楽しみやった事が描かれる

フィルムを映写機にかけて上映していた時代で

映写技師さんの技術的な事や

街の人々の尊敬を集めていた存在だったエピソードなど

胸熱な場面がたくさん

ワケありの男、盗みを働く少女、尊敬を集める映写技師

それぞれが見せる涙や本心

そうかと思えば、したたかだったり暴力的だったりと

多面な人間らしさを見せる

最後の場面、あの少女が見違えるような女の子に

労働改造所(刑務所)を出た男の向かう場所は…

やっぱり人間ってええなーと温かい気持ちに

ワン・セカンド 永遠の24フレーム 公式サイト

チャン・ツィイーは監督に見出された女優のひとり

今回のリウ・ハオツンも将来が期待されている

コン・リー ワタシが知っている数少ない中国の女優さん

チョウ・ドンユイ 彼女も押しも押されぬ中国の女優

どの映画を観ても感じた事なんやけど

みんな何かを抱えて生きている

どうにもならないけど、愛しくて面倒で大切で

それがあるかないかは大きくて

そんな何かをひとつも持っていないのは

寂しくて心細いのとちがうやろか

マスク解除云々の話も出ていますが

まだまだ油断ならない感染者数に死者数

映画を観て世界や日本を旅する…

今月最後の「ワン・セカンド」は

広大な砂漠…世界は広い…