12月、慌しい時ほど自分の時間は必要・・・
自分の現実と映画の世界を行ったり来たりする
人と話していて、「あら、こんな言葉が」と
自分が口にする言葉や表現に驚くことがある
海外で考えずに英語のワンフレーズが出てきたことがある
20代の頃、「映画を観ろ、本を読め」と世の大人たちが口を揃えて言った
あぁ、こういうことやねんな・・・と今になってわかる
幾つだって構へんと思うねん、今からでも映画や本の世界へ飛び込んでみませんかー
2022年、110本の映画を観ました(あらま)
半分以上は、ワタシの血肉になっている(はず)
さて12月は以下10本
- 人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界(日)
- アフター・ヤン(米)
- グリーン・ナイト(米・カナダ・アイルランド)
- マイ・ブロークン・マリコ(日)
- ある男(日)
- ケイコ 目を澄ませて(日)
- LAMB(アイスランド、スウェーデン、ポーランド)
- トゥモロー・モーニング(英)
- RRR(印)
- アムステルダム(米)
人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界
山野井夫妻を知ったのは、この本だった

「深夜特急」の沢木耕太郎氏が書きたくなったのが、わかる
よく行く劇場にこの映画のチラシが並んでいて
絶対観ようと思っていた
金曜日の19時、お客はみんな山に登りそうな人たち(笑)
世界的に認められ、その名も轟いているクライマー
山野井さんがどんな人か?
それは本なり映画で、あなたが感じてみたら良いのやけど
インタビューに彼は度々黙る
それは言葉を選んでいるのではなく、その時のことを思い出してはるのや、と感じた
どこまでも純度の高い人で、彼の眼差しは高くて険しいヒマラヤのマカルー西壁を
いつもいつも見てはるんちゃうやろか
その彼を深く理解し、共に登る同志でありパートナーである妙子さんの存在
過酷なクライミングにお二人は手足の指をたくさん失っている
それでも2人は普通に暮らし そしてトレーニングを重ね次のチャレンジに備えている
こういうのを「想像を絶する」って言うねんな
妙子さんがよくある「支えて待つ女性」ではなく
共に登り、お互いに守り守られの関係が素晴らしい
ベースキャンプの妙子さんとトランシーバーで
登りながら「平衡感覚がない」「降りようかと考えている」と言う泰史さんのシーン
冷静に危険だと妙子さんが意見を述べるところなど
夫婦でありながら対等なクライマー同士な感じ
また泰史さんのお母さま、肝が座っている
彼が進みたい道を黙って応援する姿勢は神さまやんか
いろいろ凄すぎて、なんて言うたらええかわからん
お二人の仲間が何人も山で命を落としている
お二人が今、生きている奇跡に震える
アフター・ヤン
ロボット云々と聞いたので
幼い頃に見たブリキでできたロボットをイメージしていた
なんて古くさい感覚(笑)
近未来がミョーにリアルで、さもありなんと思わされる
白人、アフリカン・アメリカン、アジア人が並び
え?家族?と思うが、その感覚は世界的に見てめっちゃ遅れている
最近話題のA24(映画製作・配給会社)の作品で
この前観た「チケット・トゥ・パラダイス」のような
”ウケ狙い”は一切ない
ずっと自然光か室内照明のみ、ぐらいに思われるトーンの暗さ
ちょっと見ずらくもあったけど
それが”静けさ”というこの映画のリズムを作り出していた感じ
表情の変化がほとんどないヤン
彼を兄として慕うミカ
ベビーシッターとして捉えていたカイラ
使用人のように思っていたジェイク
変わらなかったのはミカだけやったな
多様な家族の中で自分のルーツの誇りを持つというのも
人生の大きな学びなんやなー
家族でダンスゲームの時の動きが一番良かったのがカイラ
動きがしなやかできれいやった
あーいうオンラインゲーム、おもしろそう
グリーン・ナイト
おとな向けのダークファンタジーっていうのかな?
「スラムドック・ミリオネア」「Lion」のデヴ・パテル(ナイスガイ!)
予備知識なく観たけど、どんどん引き込まれてどきどきした
公式サイトを見て、そっかー、あの人はアーサー王なんや
(名前しか知らんけど)
「サー・ガウェインと緑の騎士」と言う中世文学が原作らしい
冒険ものなんやけど、中世の頃って電気がないから
ものすごく暗い
その暗さが物語が単純なファンタジーでないことを示している
女性の存在感が凄くて
まず魔女のお母さま、アーサー王の妻、恋人、首を探す女
助けられた城の妻・・・濃厚で深いキャラクターが次々に
公式サイトのトップに
「怪物と戦う者は みずからも怪物とならぬように心せよ」
この意味深なセリフ・・・
いや、もう、理屈ではないねん
デジタルでイカれた頭をこの映画の前に放り投げ
ただただ物語を泳げ

マイ・ブロークン・マリコ
女同士って、結構ムズカシイ
最近もワタシ、上から目線で来る過去の友達を
「切って良かった」と思ったところ・・・
結局、人間関係って続く時点で「持ちつ持たれつ」なんや
一方的な関係は友達関係では成り立たへん
どこかコミック調で独特の空気感で進んでゆく
タナダユキ監督の世界(「ロマンス・ドール」「百万円と苦虫女」)
女同士の友情を描く、恋愛抜きで
大きな出来事があった後、日常がいきなり戻る あの違和感
忘れたくないのに、うだうだしていられへんあの感じ
聞いてあげていたようで、実は自分が支えられていたあの感覚
10代、20代の話はついていけない感じがちょこちょこあるけど
これは痛いところにズドーンとストライク

ある男
別人になれたら・・・幼い頃、想像した事がある
ただ逃げたかっただけ、やったな
アイデンティティって、誰もがぶつかる壁なんやな
家を家族をこれまでの自分を全部捨てたいって、こういう事か
彼が誰かわかってゆく道のり
映画やし かなりコンパクトにギュッとしたんやろけど
血塗られた記憶の強烈さは苦しかったやろ
自分を認め愛せないで誰かを愛することはできひんやろし
本当の孤独を知った人は、自分にとって大事な人に
上手くいかなくても、結果的にちゃんと向き合える
時間の流れが自然で途切れてしまわない感じが秀逸
家族のアンサンブルがすごく良くて
安藤サクラはうますぎてゾクゾクした
難しい年頃になりつつある悠人役の男の子がすごく良かった!
「マイ・ブロークン・マリコ」にも印象的な役で出ていた窪田正孝
複雑で哀しい男性を何とも言えない表情の変化と
ボクシングで自分を苛め抜くあたり、なるほどなぁと思わされた
彼が誰かを探る弁護士が、もうひとりの主人公
後ろ姿の男の絵、彼のルーツ、現在の家族、最後のバーでの会話
ままならぬ現実、人間心理の複雑さを思わせ後を引く
「彼が誰であるか、知る必要はなかった」と言う妻の言葉
目の前にいる人をそのまま信じていれば間違わない
何が出てきたとしても、ってことよね
肩書や学歴、容姿、出身地、ジェンダー
様々な外的要素で人や自分を判断しがちなワタシたち
俳優陣が豪華で、柄本明の怪演もさることながら
ほんのちょっとの出演ながら重要な役の仲野太賀くん
原作は平野啓一郎氏

平野氏の本は濃くて理解が追いつかないのが正直なところ
「マチネの終わりに」も2回読んでやっと理解
でも歯応えバッチリな作家さんなので、これも見つけたら読んでみよ

ケイコ 目を澄ませて
独特の空気感
縄跳びの音、筋トレの機械が動く音、スパーリングの音
ひとつの音から少しずつ音が増えてゆく印象的なオープニング
昔ながらのボクシングジム、男性ばかりの中に
背の低い表情の変化があまりないケイコ
ストーリーがあるようでない
ドキュメンタリーテイストって感じかな
マラソンを走る人が「めっちゃしんどいし、やめよう、あともうちょっと走ったらやめようって
思いながら走ってる」と言ってたのを思い出す
ケイコも同じ
こんな痛い事、こんな苦しい事、もう嫌やと思うのに
なんでかやめられへん
その心情が真っ暗な夜、橋のたもとに佇む彼女から
仕事の合間の彼女から
母親とギクシャクする彼女から漂っている
トレーナーと息があってきて、スパークリングのリズムが合ってきて
スピードアップしてゆく時
会長と一緒にストレッチしたり、ミラーの前でシャドウをする時
彼女はただただボクシングに溺れているように見える
結果が欲しいのではないのや
先に何かがあるからやってるワケちゃうにゃ
ケイコがケイコであるためにボクシングの時間が必要やねん
また川の土手を走り始めるラスト
ケイコが暮らす街の風景を次々見せるエンディング
要所要所で感音性難聴者の現実
岸井ゆきの、これまでワタシが観た映画の中で一番良かった
三浦友和のあの爽やかなええ声、若い頃と変わらん
会長のあの佇まい、ケイコやジムのみんなにとっての存在の大きさ
さすがでございました
仙道敦子が三浦友和の奥さん役で出てはったんやけど
若い頃以来見かけなかったので
だいぶ年がしまった彼女を見て、ええ感じに年重ねはったと思った
ケイコの弟役の彼のセリフがいちいち良かった
「話してよ」「話そうよ」と姉の正面に座るねん
ええ子や・・・
監督は三宅唱さん オンライン映画イベントで知った人やけど
ふーん、こんな映画撮らはるねんや
LAMB
これ、怖いヤツやんなー💦
でもなぜか引かれて
どうでもいいけど、ワタシ 未年
タブー・・・って言うかー
異形の話は近年「シェイプ・オブ・ウォーター」「グレイティスト・ショーマン」
などなどありますが・・・
ま、身内で出会ったら、そらびっくりするけど
アダ、めっちゃ可愛かったな
人間の思いというのは、こんなことを起こす力があるんやろか
そういう存在を否定するのは心の中だけにしてほしい
彼らとて、そう生まれたかったわけじゃないし
彼らは選べない、ワタシらが親を選べないように
過酷な自然はアイスランド?
簡素な暮らし、夫婦2人っきり、ご近所などいない
だから追い詰められてしまうもの・・・なんかわかるような気がした
なぜ、彼女はああしたんやろ
もしかして逆もありえた
そしたら、彼女が殺されてたんちゃうん
すごく抑えた演出で見るに耐えない場面はなかった
でも、これはアレに例えられへん?とか
弟が兄嫁に言い寄るって、何の象徴?とか考えさせられた
人間は間違える
動物は本能で生きるだけに本質的なところで
人間のように愚かでない
なんかさ、怖いとか不気味とか
そんなありきたりな言葉ちごて
とんでもないもん、観た気がする

トゥモロー・モーニング
金曜日の夜やし、パーっと行こか!
・・・お疲れ気味のワタシは途中から
このテンションについて行けなくなったけど
ロンドンで感動を呼んだミュージカルの映画化なんやって
出演者はみんなミュージカル界のスターらしい
ミニシアターで観たので、スクリーンは大きいねんけど近い💦
一番後ろに座っても近くてしんどかったな、ワタシには
ワタシも人との関係づくりに長年四苦八苦
でもそれは、話し合ったりぶつかり合ったりを
途中で諦めたから、今、それをやってる感じ
特別な人と巡り会って結ばれて
そこからが本当の関係づくりなんや…と最近わかった
恋愛中なんて、ええとこしか見えてないし
面倒な事や違和感に目を瞑ることができるもん
2人は「もうあかん」と終わりにしようとしたけど
やり直すきっかけをくれた存在があって
また手をつなぐ2人・・・その繰り返しなんやろうね
タイトルは「明日の朝、すべてが変わる」と歌われるんやけど
あの日を境にいきなりひっくり返る、ということは実は稀やと思う
じわじわ、じわじわ変化は起こるもの
それを後から振り返った時にざっくりした時間軸で見直したら
そういう言い方もできるんちゃうやろか
疲れていたのか、途中でうとうとしてしまった
RRR
ツッコミどころ満載、インド映画(笑)
「バーフバリ」シリーズの監督作
何千人レベルの人海プロジェクトやあのエネルギーを感じると
もう、どうでも良くなってしまうインド映画マジック
イギリス領だったインド
ひどい扱いを受けてたんやな、植民地というのはそーいうものとしても
そういうのが強く出ていて、軽い驚きがあった
イギリス人男性とインド人男性と
明らかにパワー、生命力がちがっていて
ドレスを着たイギリス人女性がインド人男性になびくのが感覚的にわかる
暑苦しいまでのインド人男性の源には
イギリス人に虐げられた恨みと哀しみが底辺にあって
それがものすごいエネルギーになるのが伝わった
まぁ、ハリウッドもドン引きのアクション
ワタシが一番すごいと思ったのは
川で火に囲まれた少年を救うシーン、ラーマとビームが出会う時
この泥臭さはハリウッドではできんやろ
ボリウッド(インド映画界)やからできる事
(まぁ、そこもツッコミどころはあるんやけどね)
とにかくものすごいエネルギーで押し切ってゆくThe インド映画(笑)
でも、そこに気持ち良くノレる
大学生らしき男子3人連れ
終了後、ひとりの男子が熱く熱く語り、他2人が笑顔やった
このエンターテインメントは年末にいいかもね
アムステルダム
いやー、ハリウッドも変わったなーと、しみじみ
マーゴット・ロビーってなかなか骨のある役者さんやなと改めて
映画プロデューサーでもあるのか
豪華キャストがたくさん出ているようで
ワタシが知ってるのはデ・ニーロとラミ・マレック(「ボヘミアン・ラプソディ」のフレディ役)
ぐらいやったけど顔は見たことある!人は他にも数人
よくある群像ドタバタストーリーでなく
複雑な歴史をバックに据え、戦争とはどんなものか
儲かれば人命などどうでも良いみたいな連中が戦争を起こす
みたいな真実を描いていた
豊かに生きる、暮らすとはどういう事かということも
戦争ばかりしてきたアメリカの悲惨な復員兵たち
自らもボロボロな体で復員兵たちを助けるバートとハロルド&ヴァレリー
最後まで観たから言えることやけど
観てる途中は「これは一体どこに向かってるどんな映画なん?」と
煙に巻かれていた
退屈でもないし興味深く
このエピソードが何で必要なん?と思うことが
3人の絆や思い出に生きていて、なるほど納得
軽くないし重すぎず、それでいて人間を軽んじる狂気を
しっかり描いていて
贔屓の京都シネマが年末にこれをかけたの、納得

現実は”ままならへん”事ばかり
その現実に立ち、懸命に生きる人はなんて美しいのやろか
山野井夫妻にせよ、ケイコにせよ、あの男にせよ
そういうリアルな映画とエンターテイメントな作品
「グリーン・ナイト」「RRR」「トゥモロー・モーニング」など
いろいろあるからええねんな
普段接する機会がない世界に生きる人を知ったり
笑ったりドキドキしながら勇気やエネルギーを受け取ったり
こうやって、何とかかんとか生きていればええのや
機会があれば是非観て欲しいのが「LAMB」
ワタシは「エライもん観てしもた」と感じたけど
あなたはどう感じるやろか・・・
2023年の幕開けはチャップリンになりそーです