スケールの大きな愛とは?「街の灯」「土を喰らう十二ヶ月」「モリコーネ 映画が愛した音楽家」*2023年1月に観た映画

期せずして、アメリカと日本の映画が多かった年明け

チャップリンの作品をじっくり観て

個人的な愛と言うよりは人類愛を感じて

日本の映画を観ても

自然やそこからもたらされる食べ物や暮らしから

「豊かさとはなんでしょーねー」といった超越者のような視点

映画音楽の巨匠と今では言われていても

最初は全然評価されなかった偉大な音楽家・・・

彼のまなざしの先には遠く遥か見果てぬ世界が広がっていて・・・

個人的な愛があってこそ、遠い世界や隣人への愛があるんやとは思う

でも、今こそ愛をもっと大きな視点で捉えなあかん気がします・・・

新しい年の始まりの月に観た映画

  • ホワイト・ノイズ(米)
  • 土を喰らう十二ヶ月(日)
  • MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(日)
  • 四畳半タイムマシンブルース(日)
  • モリコーネ 映画が愛した音楽家(伊)
  • 街の灯(米)
  • あちらにいる鬼(日)
  • よりそう花々(韓)
  • キャバレー(米)

モダン・タイムス

チャールズ・チャップリン特集での1本

大きな歯車にチャップリンが

工具を持ってボルトを締めてる絵は覚えがある

時代は機械化が進む頃やったんやろな

とんでもないスピードの流れ作業に邪魔が入ったり

痒くて掻いてたらどんどんコンベヤーが進んで行く

休もうとすると・・・など

笑いを取りながら批判してるんやなと

目を見張ったのはチャップリンの身体能力

コミカルな動きなんやけど

それってあの機械のリズムやあの状況でよくできるなーと感心した

スタントマン並みに体を張ってるし

怪我したり痛い目にあったりしてるんちゃうやろか

2023年初映画

「今、チャップリンが私達には必要だ」みたいなキャッチフレーズで

チャールズ・チャップリン特集

世界では戦争が終わらず、日本は軍備増強に増税しますと

総理大臣が明言し

タモリさんが「新しい戦前になるんじゃないすか」と発言

だから、チャップリン

チャールズ・チャップリン特集

ホワイト・ノイズ

Netflixで、どうも鋭い現代批判作品らしい

それだけの知識で映画館へ

未消化な事がいっぱいやけど

ヒットラーの研究

死への恐れ

何やら陰謀めいた事にやたら敏感な若い世代

これは何を象徴してるん?と映画を観ながら

脳がフル回転

アダム・ドライバー、髪の後退やお腹が出た中年を露わにしてるのはなんで?

スーパーマーケットが何度も舞台となりエンディングでも出てくる

恐怖や狂気を繰り返し見せる

なんか、メッセージ性高いって言うかその手の映画

しかもかなり自由度の高いらしいNetfix作品

(作り手に制限があまりないらしい)

ワタシとしては

”でっかい恐怖に面と向かった人間”を描こうとしたんかなー

見て見ぬふり、向き合おうとした時の相手の反応、何が大切でどうあればええのか

なかった事にしたら良いのか?

・・・それもどうやら違うらしい

神にすがる・・・

・・・それもどうやら違う

たぶん、そこ

何が起ころうと、どう足掻こうと

すべては「自分」ちゃいますかーって事

ホワイト・ノイズ 公式サイト

土を喰らう十二ヶ月

この映画が観たくて観たくて!

12月からシネコンでかかっていたのに時間が合わなくて

ようやく贔屓の劇場でかかりました

水上勉氏のエッセイを元にジュリーが、歳の離れた恋人役に松たか子が!

この配役だけでもグッと魅力的

料理の監修が土井善晴さん、これまた「うわ♡」

季節の移ろい、自然の恵み、食べるものを育て収穫し作る喜び

いろんな人と分かち合う季節のもの

そして思い知る「死」は近くにある事を・・・

まちことの関係がすれ違ってしまったのは

年代の開き、のような気がした

若いまちこに三途の川を渡りかけた60代の男の気持ちは理解できひんかったんやろ

すべてをただそのままに受け止め

大きく泣いたり笑ったりがない静かで穏やかな男

淡々と米を研ぎ、野菜を洗う

本を読み、思いや考えを言葉にする

時間の流れ、太陽の光の変化

やがてひとつの思いにたどり着く…表情は変わらない

人間がどうにかできる事なんて、そんなにない

他人の気持ちや自分の生き死にだって

あの境地になった男に年をとったジュリーがしっくり馴染んでいた

檀ふみさんや奈良岡朋子さん さすがの存在感

歳を取る美しさってあるのやなぁ・・・

それは外見的な事でなく魂の輝きっていうのかな

ゴマを収穫し枝から落として皮を剥いて干して

そこから作る胡麻豆腐の美味しそうだった事!

掘って湯がいて大鉢に山椒の葉をもりもり載せた竹の子の煮物

小芋を道具で洗って皮を薄くし、囲炉裏で焼いたアレも・・・

柚子の皮をすり下ろし出来立ての柚味噌で食べる大根

山盛りに盛った白菜のおつけもん

摘んできたセリをお釜で炊いたごはんにパッと入れたセリごはん

匂いや湯気、噛む音が想像できてワタシのお腹はぐるぐる音を立てていた

食べるは生きる、生きるは食べる

ホンマホンマ

一面の雪景色、薪をくべるおくどさん…映画の合間合間に

「まぁ」「ウンウン」と小さな声の独り言が聞こえ

お年を召した方には懐かしい場面がたくさんあったんでしょう

土を喰らう十二ヶ月 公式サイト

ラジオ「メロディアス・ライブラリー」でも取り上げられました

ワタシもぜひ読んでみたい!

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない

所謂、インディーズもの?

出町座がかけていて、なんか気になって予告編を見た

で、3連休に観に行ったら…まずまずの客入り

タイムループに気づかない…現代人、ありがち

ワタシは勘弁して欲しい💦

(いや、でもあの1週間なら…いやいや、選べへんから!)

あのオフィスのメンバーすべてが、すごい!

部長を特に好きになった(笑)

マキタスポーツさんって、お笑いの人ちゃうのん?

ドタバタコメディかと思えばそれで終わらず

成功とは何か?何を大切にするか?仲間って?など

いろいろ出てきて、笑いながらしんみりさせエンドロールで終わりかと思えば・・・

エンドロール始まってすぐ帰った人、損したねぇ

竹林亮監督、覚えときます!

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 公式サイト

四畳半タイムマシンブルース

森見登美彦氏&上田誠氏のコラボ?

「夜は短し歩けよ乙女」の続編って言っていいのん?

京都、しかも出町柳周辺が舞台のアニメーション

「夜は短し…」が先行上映されたのは、コレのため

京都のあのシーンが、あそこにここに・・・

京都に住うワタシとしては、くぅ・・・

「夜は短し…」にも、何やら不思議な存在感の樋口師匠が

今回も意味深ながら、どーでもいい感じで出演(笑)

何やら計算高さの匂いがぷんぷんしますが、楽しんだかな

もっさり君の正体、行ったり来たりの時間軸

だから何!?の(そやからおもしろいねン)

どーでもいいけど楽しいお話

いいなぁ・・・と思うひとがいる時

あなたなら、どう近づいて どう声をかけて どう関係を作ってゆきますか

四畳半タイムマシンブルース 公式サイト

モリコーネ 映画が愛した音楽家

長いんやけど、はぁーーーすげーーーモリコーネ!

「ニュー・シネマ・パラダイス」のあの美しい旋律を知らない

なんて人はいいひんのんちゃうか、とまで思わせるエンリオ・モリコーネ

ワタシ、カケラしか知らんかったんやなと認識致しました

えらい すいません

彼が担当した映画の数々、観てないものが多かったんやけど

ワタシは何より

彼の指揮で演奏する人や歌う人の表情や体の動き、目の輝き

彼自身の指揮はごく地味なのに

魂に火をつけたんじゃないかと思わせる

歌う人の表情、演奏する人の姿にうるうるした

生み出す苦しみと合わせて、認められない苦しみも描かれる

これだけ映画のメッセージや全体像を載せた音楽を生み出せる人は

きっと世界に、そんなにいない

音楽と映画が噛み合っていないから失敗した作品も

きっとたくさんあるんやろ

噛み合っていても興行的にさっぱりだった作品がある様に

成功ばかりじゃない

そして人はやっぱりネガティブに引っ張られるんやなと思った

モリコーネの師が映画音楽など邪道だとしたように

尊敬した人に魂込めた作品を認めてもらえない辛さは

想像に余りある

でも、妻がいてくれて、モリコーネが映画音楽をやめないでいてくれて

ワタシは「ありがとう」って思うよ

「ニュー・シネマ・パラダイス」のあの美しい旋律を

ハミングしながら帰ってきた

幼いトトの笑顔を、美しい彼女の微笑みを思い浮かべて

ジュゼッペ・トルナトーレ監督のたたずまい

声と話し方が素敵でうっとりしたベルナルド・ベルトリッチ監督

どこまでも冷静なモリコーネ・・・音楽と人となりが一緒になって、さらに聞こえてくる音楽が奥底に触れてくる感じ

モリコーネ 映画が恋した音楽家 公式サイト

この映画の中で紹介されたモリコーネが音楽を担当した作品の中で

ワタシが観たい!と強烈に思ったもの

これは観た覚えがあるけど、モリコーネの音楽に注目して観たい

西部劇の音楽をやってたなんてイメージなかった

この主人公はクリントン・イーストウッド!

街の灯

チャップリン映画祭にて

リマスター版で画面も音もきれい(当時の質感はそのまま)

コメディなんやけど、ジンとくる

お金もねぐらもない男

変な欲はなくて、人類愛って言うのかな

人に対して大きな愛を持つ人って魅力的なや

人のために何にだって飛び込んでゆく

ちゃらんぽらんで力もないし体も小さいけど

でも、何と言うのか、それが”彼の幸せ”なんやな 見返りなんて求めてへん

誤解されても冷たくされても酷い扱いを受けても

彼は怒らない(このあたりもユーモラスに見せるが)

ラストの素晴らしい事!

ただただ、人の幸せを心から喜べる人って何て美しいのやろか

チャップリンだけあって、普段より年齢層高めの客筋

客席が暗くなってから入ってこられたお孫さんとおじいさん

入り口から少し奥の席で、お孫さんはサッと席に着いたけど

おじいさんは見えにくいのか通路で立ち止まってしまう

手前に座っていた若いカップルが2人とも席を立ち

おじいさんが通りやすい様にしてあげてはった

映画に負けず美しい眺め

街の灯 映画紹介

あちらにいる鬼

ワタシは出家してからの寂聴さんしか知らん

こんなに激しい恋をして・・・

(それまでだって、そうなんやけど)

出家する・・・って、余程のこと、やわな・・・

意味深なタイトル、トヨエツと寺島しのぶ・・・

この映画を知ったのはお二人のラジオのインタビュー

ホンマに髪を落とした寺島しのぶ・・・

人を好きになるって、やっぱり”理屈”ではないのやな

こんな女性にだらしのない男に、自分で自分が呆れているのに別れられない

正反対で考えてみるとわかる

優しいから、誠実だから、自分だけを愛してくれるから・・・

そういう相手を、そうだからと愛せるやろか

条件が良くてチェックリストクリアで、恋ができるのなら

もっと簡単なのかもしれへん

人間は矛盾だらけで複雑なもの

”あちら”はどこなんやろ

”鬼”が示すのは何やろ

映画を観ても「ハイ、これ!」とわからん

井上光晴さんの長女である井上荒野さんが

父と寂聴さんとのこと(それだけじゃなさそう)を書いた小説を基にしたらしい

あちらにいる鬼 公式サイト

荒野さんが寂聴さんに取材して、書いたらしい

よりそう花々

「寄り添う」って、良い言葉

以前の仕事で「寄り添う〇〇」とよくみんなで使ってた

韓国のお葬式もいろいろ 最近はあんな感じなんかな

葬儀師という仕事 興味深く観た

無口やけど思いがいっぱいあって、社会的に立場が弱い人の気持ちがわかる男

韓国社会の一面も描かれている

身寄りがない市民の死よりも「ミス・なんちゃら」にお金を使う市

儲けしか考えていない経営者

(これ、韓国だけの話ではないやん)

突っ込みどころいろいろあったけど

インド映画のような強引さと迫力ではなく(笑)

漂っているのは”地に足つけて愛を胸に生きる人間の素晴らしさ”

”花”は人間の例えのようであり、主人公が鮮やかな手つきで作る紙花かな

誰の側にも”愛”がある

それに気づく事がテーマなんやろなぁ・・・

アン・ソンギ・・・この人知ってる

何に出てはったやろ?ーぐるぐる考えて彼のWikipedia見て

そうや「眠る男」や!

よりそう花々 紹介サイト

「死の棘」や「伽耶子のために」の小栗康平監督作

観たんやけどアン・ソンギさんと役所さんが出てたことしか覚えてへんなぁ

キャバレー

午前十時の映画祭での1本

ミュージカルなんやけど、舞台は1931年のベルリン

これがひっじょーにビミョーな時期なんやなと観ていて思った

お色気要素とお笑い、ダンス、歌、生バンドと毎夜華やかなキャバレー

鉤十字の腕章をした人がチラチラ出てきたり

街で殺された人が見せしめにされている

遺体は布で包まれているが壁や街中のポスターには

鎌と槌(ソ連のシンボルーおそらく共産主義者を指す)が描かれていて

この映画の後、アンディ・ウォーホル展で彼がこのシンボルをデザインした絵が

いくつもあってシンクロを感じた

まだユダヤ人を徹底的に排除していない、ホンマに微妙な時期

ラブストーリーではあるけれど

このなんとも言えない時を描いているのに驚く

家事・育児が苦になる人・ならない人

歌ったり踊ったりスポットライト を浴びたい人・そうでない人

・・・ものすごく大雑把な括りやけど、いろんな人がいる

女性だからこうあるべき、という時代ではあったやろけど

どう考えてもサリーは、そこじゃない

彼女はそれをわかっている

どんなに彼を愛していても

自分の本質を曲げて合わせるのは限界があるわ

世界には”どうにもならない事”がある

これを知って認める事は誰もにある課題と言うか

ワンステップなんやと思う

一番怖かったのは、野外でのお祭り?で

鉤十字の腕章の若い彼の歌に人々がどんどん加わり

妙な雰囲気になったシーン

ヒトラーが人々をどんどん巻き込んで行った一端を感じる

雰囲気に呑まれる事なく、冷静に物事を見て判断する

当たり前の事がどんなに大切か

今の日本もそういう時に来てると思う

キャバレー Wikipedia

ライザ・ミネリのすごさ(歌とダンス、さすがブロードウェイ・ミュージカルでトニー賞を受賞しただけある)

彼女、お母さんがジュディ・ガーランド!

日々暮らしていていると、地味で平凡で

何やらこれでええのかな?という気になる

読書や映画は、すぐ隣にこんな世界がある事を教えてくれる

そして自分のこれまでにも

本や映画のようなことが一瞬であったとしても確実に存在していた

現実は厳しい

わかりやすく目に入るものは表面的なこと

その奥にあるものを見ないとホンマの事はわからへん

ドウシヨウモナイ事はある

でも、どうにかできる事もある

そんな事を思い、ワタシの毎日はわるくないやんと

思わせてくれる映画やったかな