楽しみに聞いているラジオ番組で
親の死を看取り、その時の自分が許せないという人のお便りに
「初めて出会う事に”あの時こうしていれば”があって当然」
「うまくいかない事や後悔があって当たり前」
「むしろそうやって後々苦しむのが普通でしょう」と
今月観た映画は登場人物の気持ちや行動が理解できなかったり
「だから何?」と感じたりした
それって、「あなたならどうする?」と問われているんやな
この物語から何をキャッチする?
表面的には〇〇がテーマやけど、要はこれが言いたかったん?
そんな風にあれこれ思う事が映画の醍醐味ではないやろかー
今月は以下の9本を観ました
- もう、歩けない男(米)
- Everything Everywhere all at once(米)
- ノースマン 導かれし復讐者(米)
- マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン(独・フィンランド)
- オマージュ(韓)
- 猫たちのアパートメント(韓)
- アングリーバードとバナナ合唱団(韓・印)
- 零落(日)
- 赦し(日)
もう、歩けない男
病気や障害を受け入れるプロセス…というものが
解明されていて
認めるまでにとても時間がかかる
これは病気や障害に限らへんのんちゃうかーと
ワタシは思ふ
人は自らの現実を直視したり、自分の非を認めるのに
時間がかかるイキモノなのだよ
恋愛も仕事もイケイケだったアダムが、すべてを失って・・・
そこを見せる、もうええやんってくらいに
家族や恋人はもちろん、自分が受け入れられへん現実
何をやってもダメな兄に頼らざるを得ず
愛した恋人はちっとも寄りつかず
誰かの手を借りなければ日常もままならない現実
かつてワタシはこういう方々を前にしていた
脳をやられた方ご本人より
ご家族が受け入れられない、この先どうする?という現実がとても大変だった
映画に戻る
どうして良いか分からなかった恋人と
もう一度寄り添いかけたけど埋まらなかった溝
ズレてしまった溝は埋めるに埋められない
理屈ではないものがあって
ホンマ「ドウシヨウモナイ」どんなにお互いが努力しても
切ないが苦しい、そこが丁寧に描かれていた
アダムが再びアダムとして社会とつながった
そんな彼の実話に基づいた映画だと言う
Everything Everywhere All At Once
カーーーッ、そりゃ取るわ アカデミー
さすがA24!
いやぁ、カンフーカッコいい!ミシェル・ヨー すげーな
こんな映画、初体験やわ
誰?脚本書いたん・・・天才ちゃうか
ちょい前に俳優組合の授賞式「デイデイ」役の男性のスピーチをSNSで見た
映画を観ていて「あ、この人やん」と
94歳の人が堂々と演じてます とっても重要な役で
この映画を観た帰り道にね
ワタシ、ちがうユニバースでは
3人の子どものママだったり、看護師としてバリバリやってたり
海外で暮らしていたり、あの人と夫婦だったり(笑)
そんな想像がふくらみまくりました
・・・誰もが、そうやねんな
今の日本社会がすべて、ちゃう
もっとちがう可能性や価値観が開けたユニバースがある
エヴリンが体験したすべてが何につながっていたか
この映画を観た人にはわかるんやけど
〇〇よね?(笑)
常々感じる母娘の関係の複雑で大変な感じが
丁寧に、それでいて「なるほど」という描き方をされてる
今、生きづらい人は、もしかしたら、ここでつまずいているかもよ
ここまで昇華した描き方ができるって
脚本並びに演出、監督 何者ですか?
ジョイ(名前からして素晴らしすぎる)役の女の子がめちゃめちゃ良い
彼女の恋人役の女の子のラスト近くでの
冗談言い合って戯れる感じがすごく良かった!
今の自分がいる世界
ドウシヨウモナイ、最低や、アタシ幸せ・・・などなど
いろいろあるかと思いますが、そこにあなた・ワタシのkeyがあるのですわよ
ノースマン 導かれし復讐者
9世紀ぐらいのヨーロッパ バイキングの国
さすがよね、戦に勝って帰ってきたら
首輪をした女性や男、奴隷をたくさん連れているのをしっかり映像化
戦争のリアル
奴隷は労働の他に、女性は男の慰み者にさせられる
憧れ尊敬した父のダークな側面・・・
”北欧ヴァイキングバーバリアンヴァイオレントハムレットスペクタル”
(映画館の紹介コメントより)
ハムレット、実はここにヒントがあるそーです
複雑なヨーロッパの歴史を辿りつつ
呪術、魔術が当たり前の世界の不思議さ怖さ
「ダンサー・オン・ザ・ダーク」のビョークが出てます!
ちゃんとお金をかけて、その時代を描写していて
俳優陣も豪華絢爛です
バイキング・・・と言えば、ワタシは「バイキング・ビッケ」というアニメがイメージ
そやけど実はこうやったのね、という血の匂いがするリアル・・・
戦のリアルが忠実に描かれている(その影にいる人に光が当たっている)
憧れの父が実は…焦がれた母は実は…
主人公が”思い込み”を打ち打ち砕かれながら直面する現実が
他人事ながら、哀しい
彼の癒し、唯一の拠り所は「大地と話す女」
打算では無い関係の美しさ
ラストはどう受け止めて良いのやら
マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン
マリメッコを有名にしたデザイナーと言っても過言ではないマイヤ・イソラ
彼女の娘や手紙・インタビューから構成されたドキュメンタリー
3人姉妹の末っ子 小さい頃から個性的
戦争を潜り抜け、たくさん恋をして、旅をして
感性を磨き、あの特徴的なマリメッコのデザインを生み出したひと
写真や映像の彼女は特別おしゃれでもないのだが
高齢になった娘さんのお家や暮らしが度々映って
それが北欧らしくシンプルだけど温かみがあって素敵
晩年、娘さんとも一緒にデザインをしていたと言うから
娘さんの審美眼というのは確かなんやろうなー
マイヤの作品を大事に保管されていたのが印象的
抽象化した独特な絵 きれいな色
美しいものを生み出すセンスは個性を羽ばたかせることから
どんどん磨かれてゆくのやろうなー
日本のような同調圧力は海外ではあまりないようやけど
自らを信じ良いと思うものを創造して売るというのは
パートナーとの関係や生活の中で簡単ではなかったみたい
満席近く、おしゃれで個性的な人たちが観に来ていた
少々、眠かった(笑)
オマージュ
淡々とした小さな作品、やけど余韻が長く長く漂う
エンドロールに映写機にフィルムを巻きつける音?
あれ、すごくよかったなぁ
元・明洞茶房のオーナーの年配の男性や
たったひとり生き残っていた女性編集者
このお二人、お年を召した美しさとチャーミングさできらきら輝いていた
編集者のお家で、彼女は足が不自由でも
フィルムを補修する手つきは鮮やかで迷いがなく
手を止めず話すし、まさに”身についている”感じ
職人!
韓国映画界で女性がごく少数だった頃
今よりもっともっと彼女達は困難でひとりぼっちやった
その過去を知ったジワンの
分厚い氷にひびが入りゆっくり溶けてゆくような変化
何かがうまく動き出したり、良い話が飛び込んできたりと
そんな変化はないけれど
作った作品がヒットせずシナリオも書けない、子宮摘出までしたジワンが
癒され励まされ、また立ち上がる感じが泣ける
歳を重ねる、役割が増える、女についてまわる面倒なあれこれ
日常に埋没していたら見えるものは狭くなり
今あるしあわせも見えなくなる
ジワン、オッキさん
ワタシもぼちぼち歩きます
遠く高く眺めながら、想像の翼で世界を飛びます・・・
猫たちのアパートメント
ドキュメンタリー
「どうしたら猫たちが幸せに暮らせるのか」と考える人たちに
まず感動した
ゆるやかに団地の住人みんなで飼っているようなノラ猫たち250匹
団地を壊したり建て替えするのに
猫たちを安全にしあわせにしたい人たちを追う
猫たちがみんな個性的でユーモラスでかわいいのなんの!
猫ママさんや猫の会の人たちの気持ちがわかる気がした
(でも、ワタシは野良猫の糞尿被害で困っている)
ただ可愛がるだけじゃない人たち
本当の愛情やなぁと思った
猫を飼う責任をよく知っている人たち、とも言える
距離って、大事やな あらためて
道具でなでなでされるのは気持ちいいけど
人の手はいや!という猫ちゃんがいた
人には寄り付かないけど置いてある餌は食べる猫
人懐っこくて自分から寄ってくる猫
猫も人もいろいろ・・・それが普通、当たり前やな
猫ママさんたちに「私達の意見を無視しないで」と言われる
会を立ち上げた若い女性たち
でも、そのエネルギーはすごいなぁ、その愛はすごいなぁと思わされた
人間たちのすったもんだにどこ吹く風の猫たち
監督は女性
以前も猫をタイトルに入れた映画を撮っているらしい
猫から社会が見えました
アングリーバードとバナナ合唱団
ワタシもキム先生に教わりたい!
子ども達や彼らの親達と一緒に歌いたいわ〜
予告編見た時からウルっときた
これもドキュメンタリー
インドが舞台のドキュメンタリーは初めてかも
劇映画は色々観たけど
カーストの下層だから、自分が教育を受けていないから
…親達の気持ちは痛いほどわかる
けれど、何より思うのは「働くことで精一杯で広い世界を知らない」ということ
広い世界を知らないから「とにかく勉強に集中させたい」
「音楽など何の足しにもならない」としか考えられへんのよ
貧困の連鎖、その犠牲は子ども・・・
キム先生が「この子は勉強より音楽に才能があります」と言ったところで
”生きてゆく”ことしか考えられない親
子どものしあわせは教育を受ける事としか考えられへんの・・・
そういう厳しいインドのスラムの子どもたちを集めて
キム先生の熱くて厳しくて愛情いっぱいのバナナ合唱団
少年の目がホンマにきれいで澄んでいて胸を打たれる
キム先生の指導の何が素晴らしいかって
歌うテクニックではなく(プロのオペラ歌手です)
この歌の意味を考えて歌いなさい、とか
仕事優先でロクに練習に来ない親たちに
あなたのこれまでを思って歌って、とか
とにかく何かを解き放って大きな声を出させる、みたいな
ホンマに人間らしい、その人たちの苦労や気持ちを理解した指導
「Amazing Grace」のソロを歌うママの渾身の歌声に
キム先生はハンカチで拭くほど泣く(ワタシも歌の時点で泣いた)
表情があまりなく夫の影に隠れるような妻(女の子のママ)が
やがては自分から歌いお母さんへの気持ちを歌った歌を
我が子が目の前で歌う姿に涙をポロポロこぼして子どもを抱きしめる
そう、一番泣かされたのは”親の変化”やった
彼らは歌う喜びや楽しさを知らず、働いて働いて働き詰めで生きてきたんやな
歌うことや音楽に初めて触れたのかもしれへん
子どもと親との合唱コンサートを終えて
(その時のお客の様子がまた泣かされる)
彼らの日々の暮らしに歌が生きている様子に、また胸打たれて泣けました
キム先生、やったね!
零落
燃え尽きて何もかもが嫌になり、最低の底まで堕ちて行く
希望が出てくるのか?
底まで行ったら何か見えるのか?
「売れれば良いんだろう!」と言い放ち
苦しみの果てに生み出した自らの作品を自分で貶め
救いようがない主人公・・・最後に泣いてたけど、どうしたいんや、アンタは
自分の真の姿を見せない恋など
ほんのひとときの夢のようなもので
彼女に甘えるばかりで”双方向の何か”がない関係など続くはずがない
この主人公のダメさは、すでに大学生の頃の彼女にはっきり指摘されていて
それがずーーーっと乗り越えられない
いつも人のせい、女性に甘えるばかり、人間関係をうまく築けない
冷ややかで成長が見られない彼
そんな人間臭くて最低な男を斎藤工が生きてるのん?アンタ?という雰囲気
なるほど、というキャスティング
監督は竹中直人
人気漫画が原作らしい
”とことんダメ”を描くのはわかる
その後の空っぽ感っていうのかな、あれを表現したかったんやろか
赦 し
許すって、ワタシにとって課題
”加害者”と”被害者”だけじゃなくて”加害者が被害者”だったりする
若い女性の目が忘れられないチラシがきっかけ(松浦りょうさん)
日本在住のインド人監督作だそうで
映像の質感や捉え方が日本が舞台なんやけど海外っぽい
寒い時期の話のようやけど、寒さや冷たさ…温度を感じひん
すごいテーマなんやけど
拍子抜けした、と言うか ワタシは全然響かへんかった
人それぞれ悲しみとの向き合い方やそこからの脱却は
かかる時間もちがうし、正解もない
7年前のことでも生々しいままの父
新しいスタートを切っている母
罪を認めても辛い記憶に苦しむ女性
加害者であり被害者だった女性がぴりりと引き締めていたけど
これで終わりにすると決めた父の心の旅路が不可解
元夫と今の夫を行ったり来たりする母も同じ
相手を赦す、という物語ではなく
赦せない人は誰かってことかなぁ・・・
珍しくドキュメンタリーを3本も観た
ベストは「アングリーバードとバナナ合唱団」
歌う事=生きる力や支えになることもある、そして大きな喜びだったりする
そして気持ち良く泣かせてくれます
(泣くって気持ちいいのー)
オスカーで旋風を巻き起こした略して「エブ・エブ」
はぁ?なんじゃこりゃと思うけど
頭ぐっちゃぐちゃになるって時にはええよ、リセットされる
ちがう世界であなたもワタシも全然ちがう人生を歩んでいるのかもよ
・・・そう思える楽しさ、可能性にニヤニヤして下さい