言葉にならないものを映像にする「トリとロキタ」「BLUE GIANT」「せかいのおきく」*2023年4月に観た映画

「キネマ旬報」を立ち読みしていたら

私のベストとワースト映画特集で

ものすごく良かった映画がある人のワーストに入っていたり

絶対ハズレと思い観なかった映画がベストに入っていたりした

評論家や俳優、映画関係者だけじゃなく、いろんな世界に生きる人の意見が載っていた

そこには”正解”は存在してへんかった

この人はこう感じはったんや…と思った

好きなものは好き

好きになれないものも、同じ事

大事なのは「自分が本当にそう感じた」をちゃんと言葉にする事

今月もいい映画を楽しみました

  • トリとロキタ(仏)
  • メグレと若い女の死(仏)
  • GOLDFISH(日)
  • BLUE GIANT(日)
  • ノートルダム 炎の大聖堂(仏)
  • エンドロールの続き(印)
  • フェイブルマンズ(米)
  • 最高の花婿 ファイナル(仏)
  • せかいのおきく(日)

トリとロキタ

ロキタの不安そうな表情ばかりが浮かぶ

まだ10代のロキタが実際に血の繋がりのないトリを

ホンマの弟のように、そして彼女の心の支えとして最後まで守ろうとする(涙)

難民であるロキタにはビザが下りない

そやから危ない仕事をせずには生きてゆけへん

(あの状況で送金してるのに驚く)

同じ肌の色の人が付きまとい

危ない仕事をして得た大事なお金をせびる

難民になるしかなかった人たちの現実を知る・・・

観ていて、こちらが苦しくなる程の世界の汚さ

それに対してトリとロキタの仲睦まじさや絆の強さ

世界は汚いけど、汚いけど…やっぱり美しくもあるんや

ロキタが性的な暴力やパワハラなど脅しや暴力で

彼女の意思など簡単にひっくり返される

「私は汚い」と呟くロキタにまだ幼いトリがかけた言葉に泣きそうになる

おかしいのは世界や、大人たちや

あんたらは犠牲者や

「そうだ、難民になろう」という漫画を描いた人に観てもらいたい映画

トリとロキタ 公式サイト (コメント欄をぜひ読んで)

メグレと若い女の死

ジェラール・ドパルビュー、お久しぶり

時代の質感やパリの光と闇

高級メゾンのドレス・・・

なんか、ええのん観たなぁ・・・という余韻

「仕立て屋の恋」「髪結いの亭主」のパトリス・ルコント監督

メグレ警部のミステリーの世界

好きなシーンは辛い目にあった若い女性を自宅に泊めて

妻と若い女性がお喋りするのを聞きながら

微笑みながら髭を剃るメグレ警部、うん、めっちゃいい

なぜメグレ警部が若い女性に心を寄せるか?

そこにキモがあるねん、っていうのを匂わせるだけのストーリー

全部解説しいひんってのが、ええとこ

若い女性も「あれ?私目当てじゃないの?」

「この人、何考えてるの?」と・・・

あの感じが余韻を残す

健康上に問題があり、大声を出したり走ったり派手な事は何にもない

でも「しつこい」(笑)

あの夫人と息子の感じが気持ち悪かった

知らんかったけど

体にぴったりくるドレスを着る時、下着は着けへんのねー

あの隠す女性が妙にセクシーでドキドキした

メグレと若い女の死 公式サイト

GOLDFISH

永瀬正敏さんのインスタでこの映画を知った

パンクバンド!?

国鉄時代のユニフォーム ナッパ服がまるで学生服のよう

ハルはどうなりたかったんやろ?

若い頃のコンプレックスや焦りや不安は誰もが経験するけど

表面的には、なんとか折り合いをつけられるようになる

それが大人になってもできなかったハル

ある意味、とてもピュアなんやけど

その不器用さを何かに向けられたら(ハルにとっては音楽やな)

また違ったんちゃうかな

ハルの心中は誰にも理解できひんけど

彼女はなんであそこまで尽くせたんやろ?

普通の暮らしに戻ったメンバーが30年ぶりに集まる

それぞれいろいろあるはず

「よし、やるか」にどれだけエネルギーがいることか

おじさんになっても熱くてピュアな男たち

街の切り取り方や金魚のモチーフ、インテリアなど

独特の世界観と映像の感じ”亜無亜危異”のギターリストが初めて監督に挑戦しはったんやって

”怒髪天”の増子さんがバンドメンバーとして出演

かっけー!独特のオーラと存在感

GOLDFISH 公式サイト

BLUE GIANT

えらいもん、観てしもた

行きし(映画を観に行く道すがら、という意味)曇ってバラバラ雨降ったりしてて

帰り、映画でほろほろ結構泣いたので瞼が重いのに

晴れ渡った青空で賀茂川も新緑もピカピカキラキラしてて

音楽のグルーブ、映画の素晴らしさがからだに残っていて

生きている素晴らしさに嬉しくて世界そのものに感動しながら帰ってきた!

いやぁーーー、全然知らんかったんよ

でもさ「高橋優のリアラジ」(ラジオ番組)でこの映画について聞いて

行ってみたのさ

土曜日午後の上映回で補助席が出るくらいの人気!

「クセツヨLIVE音響」上映やったらしい・・・

音楽が上原ひろみさんってのも、聞いてたから期待度高いわさ、そりゃ

音楽を映像化するって、すごく高度なことやと思うねん

文学にするのも

音は「聞くもの」やからな

それを「見るもの」さらに抽象的に上げて「感じるもの」にした

とてもチャレンジングでエキサイティングな映画やった!

グルーヴや音楽から受け取るイメージがアニメーションになっていて

光や色やその心地、世界が絵になってた!

楽器が照明で輝く感じ、汗が滴り落ち音と一体になる感じ

音楽で揺さぶられた人たちの心が見事に表現されてたし!

上手い下手のテクニックじゃない、というところの証明すら

まるで数学の授業のように(笑)解明されたんちゃうん

熱い熱い演奏、音に載っているものの分厚さ、重量

これ、すげーわ(大袈裟やと思てるやろ?これをCheck)

BLUE GIANT 公式サイト

このサウンド・トラックは値打ちもの

漫画の方も凄そう・・・読みたーーーい

ノートルダム 炎の大聖堂

パリ ノートルダム寺院の大火災、記憶に新しい

その全貌?をドキュメンタリーな感じで

(あれだけの火災で死者0なんやって)

嘘のような本当の話・・・という前置きで

まさかまさかの連続であの大火災へ転がってゆく

(なんてずさん!なんてひどいの!)

いろいろ”ずしん”とくる場面があったんやけど

1番は・・・大統領が現場に来るとあって

ダミーの指揮車をつくるところ「お偉方に君たちの邪魔はさせない」

くーーー💧わかってるやん

他にはね、パリ市民の心の拠り所ノートルダム寺院が燃え盛り

いてもたってもいられず集った人たちが歌うシーン…

その声が命がけの消防士たちに届くシーン…

実際の映像が使われ、リアルな事この上なし

わからなかったのは”鉛”

あれだけ大量にあったのはなんで?何に使ってるの?

公開しつつ改修してるやん?フランスの工事現場って

禁煙も守られない、あんなモラルがないの???

トップ、偉いさん、みんなみんな消防士の人命最優先

そらそうやねんけど、ワタシめっちゃ感動

日本はあんな場面であぁはならんわな

そして、大聖堂と文化財

なんというか・・・意識の高さに嬉しすぎて鼻血が出そう(笑)

燃えたら終わり・・・ホンマそやね

自分の仕事に誇りを持つ人たち

パリ市民の”美”や”歴史”を大事にして歌う姿

なんだか・・・ワタシらの国であんな風に対処できるかな

とかいろいろ思って、うらやましいやら打ちのめされたやら・・・

ノートルダム 炎の大聖堂 公式サイト

エンドロールの続き

サマイが「光を捕まえたい」と思うのがすごい!

仲間がそれぞれに光を捕まえようとする

その映像がホンマにうつくしくて素敵!

大人の策略がバレバレではあるものの、先人たちへのリスペクトが

冒頭から述べられ

監督自身がサマイやったんちゃうやろか

インド版「ニュー・パラダイス・シネマ」

サマイのお父さんが自らを「負け犬」と言うのが悲しかった

あんな賢く美しい妻と可愛い子どもたちがいて

何が”負け犬”やねん!アホか(むしろ、愛する人と結ばれた勝者ちゃう?)

メッセージがいろいろあって

アナログからデジタルへーここも監督は強調したかったんやろけど

フィルムが女性のブレスレットになる過程やあの説明的な映像はいらんなぁ

あの幼さで大海に飛び込むサマイに幸あれ!(あるけど)

エンドロールの続き 公式サイト

フェイブルマンズ

スピルバーグの映画を久しぶりに観た

「さすが!」と身を捩って言いたくなる物語の深さ

スピルバーグのこれまで、深いメッセージを感じるエピソード

ある小説家が

「虚構の世界を描いているのに”事実”を混ぜ込むとおかしくなる」と

話していたことを思い出す

”スピルバーグの自伝的映画”という触れ込み

事実そのものでは勿論ないやろう、エンターティメントなんやし

でもアレに近い話があったんやろ、彼が描かずにはいられなかった事が

父・科学者(頭)と母・芸術家(感覚)の両親

その母の独特さや特徴を印象的に見せていて

良い悪いでなく、こういうもの、という感じを受けた

また祖母の兄が「芸術には犠牲が付き纏う。でも孤独なその道を突っ走れ」と

まだ映画の道に腹が括れてない彼に語るシーン、その別れ際のチャーミングなおじさんの笑顔

忘れられない布石となるエピソード

自分に正直に生きないと自分でなくなる…と

泣きながら、子どもに罵られながら、血を流すように

自分の本当に向かう母の姿に泣きそうになった

自分の本当に望むものをつかむためには

それに値する大事なものを手放す必要があるーを

痛いくらいリアルに描いてる💧

ユダヤ人だからと虐められ

そこから次へ動き出すきっかけが”映画”だったのも

あのお互いに中指を突き立てて別れるシーンが、うん、ティーンエイジ(笑)

家族や友達、恋人って、すんなり行くわけない(笑)

ぶつかり合うからこそ得る絆や愛しさ

ベタな感情や幼稚な自分を乗り越えてスピルバーグは巨匠となった!

役者さん達がみんなハマりすぎていた

大好きなミシェル・ウィリアムズが素晴らしかった!

でも、公式サイトにキャスト紹介コーナーがなく残念

フェイブルマンズ 公式サイト

最高の花婿 ファイナル

この頃、フランス映画と言えば”移民”が絡む

もう世界は”移民”を軽視できひんねん(我が日本へ声を大にして)

シリーズ物は苦手…(ドラマなのかしら)

ラジオでこの映画の配給会社の人が「フランス版寅さん」だと

フランスにも寅さんがいるのか!?

フランスのおしゃれなイメージと寅さんがどうもしっくりこない

宗教、文化、食事、人種などに加え、それぞれの性格というものがある

姉妹は仲が良いのに婿さんどうし、親どうしがドウシヨウモナイ

でも、何が正しいか?がテーマではなく

これだけの違いをどう捉えて、どう付き合って行くか、や

それにしても男女差を感じるところ満載で

概ね男性が暴走系で女性がその手綱をうまく取る感じ(笑)

言っちゃワルいが女性の賢さが家族を救う

そして女性が反論したり怒ったりすると

男性は素直に(←ここ大事)謝ったり相手の意思を尊重する

妻に頭が上がらない人ばかり・・・

フランスのエスプリ溢れるブラックジョークに

何度も声を出して笑った

仲良しこよしでなく、天敵は天敵のまま、ま、それなりにバランスが取れてくるラスト

それにしても、子どもができても夫婦が家族の基本で

ホームパーティでも夫は妻の腰に手を回し

妻は夫にもたれかかったり、さも愛し気に夫の顔を撫でる

夫と妻であり、男性と女性でもあり…というのが、実にいいなぁ

バシバシ言い合っても同じベッドで仲良く寄り添って眠るし

日本との文化の違いを大きく実感

家族が多いって大変やし面倒やけど

やっぱり楽しいかも

最高の花婿 ファイナル 公式サイト

このシリーズ、フランスでは大ヒットしたらしい・・・

せかいのおきく

予告編を何度も観ていて、絶対観ようと思っていた

モノクロが基本だけど、パッと色が出る時が何度か合った

そしてモノクロなのに綺麗な色を感じたり

このおそろし過ぎるシーンに耐えられるのか、とも思った

6つだか7つの章からなっていて

それが絵本を見るような感覚にさせた

簡潔やけど想像させる事がたくさんあった

「せかい」は全然知られてなくて

日銭を稼ぎなんとか食べていた時代

でも「せかい」はとてつもなく広いと知っている人が

残した言葉とある日再会した中次

ハッとしたんやろな

「せかい」というものを初めて自分の感覚で捉えられたんやろな

「知りたい」と思う人に「せかい」は開かれるのかも

江戸時代の循環型社会が描かれる

明言はネタバレになるので控えるが

何度も何度も彼らの労働の大変さが出てくる

ワタシらの社会の目を背けたくなるものがスクリーンに出てくる

それを蔑んだり馬鹿にしたりする人

この辺りは何か大事な事を示唆しているようでならない

阪本順治監督作

常連の石橋蓮司さんや佐藤浩一さん(痩せてこられたようで気になる)

佐藤浩一さんのご子息 寛一郎さんとの共演

真木蔵人さんのピントの外れた和尚さん

不思議な魅力の黒木華さん(武家の娘の体の動きが素晴らしかった)

三枚目ながら複雑な心境を見事に見せるワタシの贔屓・池松壮亮くん

・・・役者さんたちが実に魅力的

せかいのおきく 公式サイト

メッセージがセリフになってる事もある

はっきりと言葉にはなっていなくても感じ取れるように

映像で何かを伝えるーそれ自体がチャレンジなんやな

誰かを思いやる気持ちや放っておけない感じ

やらずにいられない事、命がけの仕事

面白くてたまらない事…その奥には

自分ですら気がつかない目に見えない”愛”がある

言葉にならないものを言葉にして、それをいかに表現するか

その表現が届くか届かないか、なんやな

ん?これって映画に限らへんやん・・・

という訳で

ワタシも自分の感じている事をちゃんと言葉にしたい

絶賛チャレンジ中でございます