あなたの親友はどんな人だろう?
どこかで気にかけてくれて存在そのものが支えで
一緒にいると話が尽きない
おもしろがれるものが同じ
時にライバルで時に姉や兄で
友達は本当にありがたい
たくさんの人に支えられ励まされてきた
人との関係は流れてゆく
長く仲が良かったのにパタンと終りがくる
以前のような親密さはないが
もう会えないが今も懐かしくあたたかく
思い出す親友ーーーそれはバイク
ハタチ過ぎに免許を取ってから
ゆっくり行動範囲を広げながらバイクにハマった
看護学校の夏休みに1ヶ月かけて
北海道を旅しようと計画していたら
母が心臓にペースメーカーを入れることになった
楽しみにしていた北海道上陸がパァーになった
その後もバイクで行くことはなかったが
信州・北陸・伊豆・東北・四国・九州・屋久島
フェリーや高速道路を使って遠くまで足を伸ばした
看護の仕事をしていた間も
よくバイクに跨がってリフレッシュしに出かけた
入職してペーペーの頃はまとまった休みを
取る余裕もなく
1週間の休みを取るようになったのは
3年目だっただろうか
エンジンをかけると世界はバラ色に感じた
【看護師のわたし】を家に置いて
【ただのわたし】になって過ごす休み
豊かな水がある場所が好きで
川や湖、海へ出かけてはぼーっと眺めていた
激しい流れを見ているとなぜか心地良かった
今も現場で毎日汗を流す看護師さんには
よくわかってもらえると思うが
これが終わったらあの患者さんの○○
詰所に戻るついでにあれしてこれして・・・
午前中なんて1時間ぐらいの感覚で過ぎてしまう
そんな毎日を過ごしているとね
いつもどこかで何かを考えている
神経が休まらない、のね
そんなだったからバイクに乗っていると
いつの間にか何も考えていない
ぽかんとした自分がいることに気づく
気づいた瞬間、なんてなんて気持ちがいいのだろうと
驚きの大発見だった
わたしはその瞬間を求めてバイクに乗っていた
道に迷って心細いような山奥も
1日中の雨降りでも
排気ガスで真っ黒になりながら
肌も髪も日焼けと風でばしばしになりながら
バイクがいてくれたから遠くへ行けたし
野外にからだを晒して長時間乗ることは
【自分の運転で遠くまで行った】到達感満点だった
初めての場所で初めて出会う人と
話したり助けられたり励まし合ったり
そんな時間もくれた
寒い日のシールドの曇り
雨で重くなったグローブ
端から端まで見えた虹のアーチをバイクで走り抜けたこと
ガソリンスタンドのお兄さんが
おつりと一緒にくれた飴玉
道に迷ったわたしを軽トラで先導してくれた
農家の女性
フェリーで一緒になったおばあさんから
送ってもらった箱一杯のみかん
ツルツルに凍った道で転んだわたしを
助けてくれた車で旅する男の子達
坂道でエンストして転んだバイクを
一緒に起こしてくれた鳶職のお兄さん達
・・・今思い出しても笑えて温かい気持ちになる
そんな旅にしてくれたのはバイク
バイクを降りて10年くらいになるだろうか
なのに今も懐かしい友達
あなたにも何かあるだろうか
現実から離れてしまうほど夢中になるもの
こころ安らぐ場所
心地よいひととき
ひとつでもふたつでも
いくつあってもあなたの強い味方だ
看護の仕事は
孤独でただ辛かっただけのように思っていたが
バイクで違う世界を見て感じて
また職場に戻って働くエネルギーを再生していた
リセットを繰り返し繰り返し人は生きてゆく
その方法をいくつも持つことは
【自分のメンテナンス】だ