10月の終わりに
京都に西川美和監督が見えた
わたしはこの人を
映画「ゆれる」で知った
ニュース番組で「ゆれる」が
じわじわ観客数を伸ばしている特集だった
そしてかなり時間が経って
やっと「ゆれる」を観ることができ
あのリアルさに「いけないもの」を見るような
どこか罪悪感を感じるような
ざらざらとなんだか複雑な気持ちになった
そう
誰ものこころの中にあるドロドロと
その中にキラリと光る
砂金の小さな粒を見せるような映画だった
以前から大注目で
密かにこの人はすごいよー!
と常々思ってる香川照之さん
その彼の表情にぞくりとしたことを
覚えている
汚いものは見て見ぬ振りをしたい
あえてフォーカスしようとしない
それを監督は映像化して
「こういうの、あなたもあるでしょう?」
目の前に突きつける
あの鶴瓶さんの苦悩する表情を
引きずり出した「ディア・ドクター」
凄まじい本気のぶつかり合い
阿部サダヲさんと松たか子さんの
「夢売るふたり」
(帰り道フラフラだった・・・)
綻びがあるものの
何とか存在している家族
そんな家族は今きっとどこにでもある
「蛇イチゴ」
そしてこの秋公開された
「永い言い訳」
精華大学の講座で監督が来られると知り
行きたかった予定をキャンセルして
できるだけ前の席に座った
華奢な普通の女性だった
映画を撮るって
「三池炭鉱かマグロ漁船のような
過酷な現場」らしい
未だにこれからも映画を撮ってゆく
と腹をくくれないほど
辛く苦しいと静かに言われた
できることなら他の仕事をしたいと
思う気持ちがいつもあると言う!
と言われる一方で
是枝監督や現場スタッフに支えられ
熱い思いが溢れる
また西川美和監督は
ご自分で本をお書きになる
原作を映画化ではなく
原作からお書きになるので
非常に時間がかかるのだそうだ
監督をやっているだけに
これは映像に撮れないとわかる
映画作りはとてもお金がかかる
これは無理ということがわかってしまうだけに
1行書くのに時間がかかるのだそうだ
「永い言い訳」のメイキングビデオも
少し見せてもらったが
スタッフがひしめく現場で
淡々と俳優に話している監督
自分で書いているだけに
ここはこうでああでと伝え
俳優さんと作ってゆくことは
すごくおもしろいようだった
今回はこどもが大事な役割で
かなり出演する
その演出たるや大変で
しかしこどもは自分なりに自覚を持ち
どんどん成長し驚くような姿を見せたという
それは映画から十分伝わった
監督のお話から
映画の見方が深まった感じがした
登場人物の衣装・住まい・話し方
全てから映画のストーリーと
結びつくようになっている
気に入った映画や未消化な映画は
何度も見て
細かなところに注目するといいのだな
実に堂々とお話しされ
30代の女性らしい側面や
地に足がついてる感じなど
実にあの映画の感じと結びつき納得!
やっぱり映画監督となると
すごい仕事だと思うし
ヒット作を出すことも
大変なことだと伺える
やっていることに対して
収入は全く見合ってないけど
映画が好きで好きでたまらない
そんな人たちで映画を作っている
その感じが監督を支えている
いつもどこかで逃げたい思いを抱きながら
それでも踏ん張って映画を撮る
それって今この時代を生きている人を
生き方からして励ましてる
監督と言えどひとりの人間
観客が見ていて
キツいと思うような映画を撮るって
ものすごいエネルギーが必要で
凄まじい葛藤があるだろう
華やかな職業の人も
こうして産みの苦しみを味わい尽くして
生きている
映画の登場人物だけでなく
今生きている人たちすべて
それぞれのドラマを生きてる!
いろいろあるけど
思いっきり泣いて笑って
ジタバタしまくって生きてたらいいんやわ
そんなことを強く感じ
やっぱりわたしは西川美和監督がすきだし
これからも彼女を注目してゆく
これからは「特別な人」という見方ではなく
ともにこの時代を生きる同志的な気持ちで
学生向けの講座で
若い人たちを励ますような
あたたかな笑顔
大きく世界を見つめている人だった
最後に監督紹介コーナーがあります