青森の弘前城 5月の連休の頃満開を迎える桜の名所
100年ぶりに石垣を改修工事するらしい
お城を直す大がかりなプロジェクトで
10年かけての修理になるそうだ
曳屋(ひきや)というお城そのままを水平に移動させ
土台を直す方法を取るようだ
400トンものお城を70㍍も移動させることができる
それもすごいが
100年に1度のチャンスに出会ったという
そんな巡り合わせも不思議に感じる
ましてや関西の遠く離れた地から青森に思いをはせる
このご縁も不思議なものだ
最後に勤めていた病院で病棟の引っ越しを経験した
病棟をひとつ閉鎖してふたつの病棟を一緒にする
大胆なプランだった
何年も前から病院の経営はかなり厳しい
毎日とても忙しいのに患者さんは減っていると言う
誠実に地域医療に献身していても病院は赤字
本当におかしな世の中だ
まったく毛色の違う病棟をひとつにして
ベッドの稼働率を上げる
引っ越しは患者さんに迷惑をかけられない
方法は師長や役責会議で数ヶ月前から練り上げられ
会議で下ろされ当日の勤務は吟味され
患者さんやスタッフの説明など
細かな準備の末、日勤帯で始まり終わった
わたしが所属する病棟に
別の病棟が移動してくるカタチだった
ベッドの移動も物品の移動も
紙に書いてそのものに貼られていたので
運ぶことに専念
混乱しそうな物品の管理は役責が詰所で指示
準夜勤からスムーズに動けるように
ものすごい勢いで引っ越しが終わった
引っ越し当日よりその後からが大変で
何がどこにあるのか
新しいスタッフや新しい患者さん
しばらくは混乱が予想されていたので
スタッフの配置も手厚く
詰所には人が溢れかえっていて居場所がなかった
患者さんもさぞかし落ち着かなかっただろう
休憩室も一緒になって妙に遠慮し合い落ち着かなかった
しかし引っ越し当日も落ち着かない間も
大きな事故がなかったことは
本当に何よりだった
全く毛色の違う病棟同士だったので
一緒にやっていく上で日々問題が起こり
わたしも失敗の連続だった
それでも止まる訳にもいかず
1年経つ毎にスタッフも慣れシステムも改良され
病棟の雰囲気もルーチン業務も大きく変化していった
考え方とらえ方その病棟の当たり前がお互いに違い
相手がおかしいと言い合うのが常で
スタッフ同士のぶつかり合いは激しかった
それでも力を合わせて切り抜けていかなければ
仕事は回ってゆかない
わずか3年に満たない間に師長が3回も替わった…
弘前城がゆっくりと水平に動く映像を見て
そんな激動の時を思い出した
あの頃みんなひとりひとりが
日々乗り切るのが大変で必死で精一杯だった
誰が悪い訳でもないのに何か対象を見つけては
怒りや不満やイライラをぶつけるスタッフは多かった
そんな現場で患者さんにいい看護なんて
提供できない、そう思っていたが
そんな雰囲気は初めてのことではなかった
何度も何度もあったし
どんな時でも365日24時間止まる訳にはいかない
惰性のように働く反面患者さんに元気づけてもらっていた
あなたも毎日いろいろあるだろう
けれど嫌な気分で過ごすより笑って過ごしたい
また明日も頑張ろうって思いたいだろう
そんなあなたの気持ちがどこかの誰かに
届いているから
100年ぶりにあの大きなお城も動くんだから
あなたの職場も小さく変化しているのかもしれない
あなたも【動かす側】のひとり
今日も本当にお疲れさま