8月のトピックは
・UPLINK京都へ初めて行った
最近出来たミニシアターで4つの劇場がある
いい映画がかかります!
UPLINK京都のお手洗い
モダンでハイセンスな壁紙
・2本の映画の中で「ヒロシマ」と聞いた!
*ちなみに「ジョーンの秘密」と「オフィシャル・シークレット」
8月ですものね
今月観た映画は
- カセットテープ・ダイアリーズ
- SKIN
- 蜘蛛女のキス
- HONEY BOY
- ジョーンの秘密
- 名もなき生涯
- 17歳のウィーン
- きっと、またあえる
- シチリアーノ
- オフィシャル・シークレット
カセットテープ・ダイアリーズ
SONYのウォークマン
あの頭にかけるイヤホン
1980年台に流行った髪型・ファッション
そんなに遠いわけでもないのに懐かしい
いや、待て あれから40年程経ってる?
単なるイケてない高校生が
人生を変えるストーリーではなく
舞台が1987年のイギリス ルートン
移民への差別
サッチャー政権下、失業者が溢れていて…
主人公自身が移民のパキスタン人
ブルース・スプリングスティーンの歌詞が
言葉を操る彼の内側に強烈なショックを与える
そしてあの先生も政治的な活動をする彼女も
彼に火をつける
自分の思いや言葉なんて
「ゴミ」だと言ってた彼が
自分の世界を広げつつ家族も大切に考えられる
大人になってゆく
こんな経験をした男性の監督かと思えば
なんとケニア生まれのインド系、ロンドン育ちの
女性監督
隣人のお爺さん役の人が
とても気になった
主人公のお父さんの濃すぎるキャラクターに
負けそうだったけど
歩み寄るラストは
彼の家の中だけのことじゃない
もっと大きなものを示唆してるんちゃうか
S K I N
「リトル・ダンサー」のジェイミー・ベルが
顔までタトゥーまみれになって
レイシストから変わってゆく人間を熱演
内容を少し知っていたから見たけど
最初、後悔したってのが正直なところ
そのくらいヘビーでした
短編との合わせての上映で
短編もとてもコンパクトに良くできている
憎しみの連鎖の行く末は皮肉でしかない
そして、我が身に跳ね返る
ジュリーが誇り高いのに打たれた
こどもたちを最優先に
けれど自分自身を信じる強さと言うのか
彼女の言動すべてから出ていた
わたしの中にもある「ちがいを特別視する気持ち」
やっぱりこの世で一番恐ろしいのは人間だ
レイシストだけが特別ではない
殺人・暴力の世界に本当の愛などなく
そういう集団の歪んだ人間関係
とにかくゾッとして生きた心地がしない
ラストの二人の複雑な表情と無邪気な赤ちゃん
そして実話に基づいているので
モデルとなった人物の紹介に救われる思い
*「SKIN 短編」は2019年アカデミー賞短編映画賞受賞
蜘蛛女のキス
1985年 アメリカ・ブラジル映画
ウィリアム・ハートがアカデミー主演男優賞受賞
タイトルは聞いた事があったけど?
1985年がこんなにも遠いとは・・・
「ホモ」という言葉が連発
政治犯を追う警察の動きはまるでコメディだし
LGBTQの人もそれぞれひとりひとりちがう
男性が男性を好きになるのは
「男性」だから、ではなく
「その人だから」なのだと思う
これは誰もに言えること
理由など実は後付けでしかない
本当の恋愛であれば
バレンティンがモリーナを受け入れたのは
彼の人となりが魅力的だったからだと思う
(あの展開には驚いたが)
わたしには難解だったけど
こちらのブログでなるほど、とわかった事がいくつも
HONEY BOY
UPLINK京都での初・鑑賞作品
物凄い轟音から映画は始まる
ドウシヨウモナイ駄目男の父を演じた
シャイア・ラブーフの実話だそうだ
この映画づくりを通して、父を演じて
彼はクリアしたんだろうな
理屈じゃない、ただ手を繋いでいて欲しかった
ただギュッと抱きしめられたかった
あのわずかな瞬間を思い出して
愛されていた事を知る、大人になってから
大人の世界にいるこどもだから
わからなくても良い事をわかってしまう
愛と安らぎを欲している
隣人のお姉さんと言葉なく慰め合うシーンが
夢のように美しかった
「WAVES」の妹の恋人役のルーカス・ヘッジズが
大人になった主人公を演じていて
不安定さや苦悩、少しずつ解けてゆくような笑顔
過去の記憶へと入ってゆく感じなど
すごく繊細にリアルで素晴らしかった
ジョーンの秘密
ストーリーはとてもエキサイティングで
俳優陣も熱演だったが
わたしが引っかかったのは
「抑止力」という言葉だった
原子爆弾が世界に出てしまった以上
しかも戦争中ならば
「使えない」ようにする、と考えるのが合理的なんだろうか
あちらが持てばこちらも持つ
「抑止力」という考え方しかないのだろうか?
ジョーンの場合、あの時代背景
立場など諸々を考えれば
あの選択が彼女にとって最善だったのだろうけど
あともうひとつは
愛しているなら何でもできるだろう、とか
恋人なんだから言う事を聞いてくれ、という
レオの姿勢と態度がアホやなぁ…だった
任務としてやるのなら
愛を持ち出すのは卑怯だし
本当に愛するのであれば
その振る舞いは何やねん?
結局ジョーンが一緒になった人も
あれだけの重い事実を知って
よくぞ結婚生活ができたな、と思う
ソニアの得体が知れなくて
結局レオのいとこでもなかったようだし
突然失踪したり
ジョーンのミンクのコートを持っていたり…
そういう得体の知れなさが
スパイという事なのかも知れない
原作のモデルとなった人物を
ジュディ・デンチが貫禄バッチリに演じている
名もなき生涯
共に働き暮らしていた小さな村の人々が
実の姉が義母が
彼や彼女や子どもたちに向ける怒りや憎しみ
怒りや憎しみを向けるべきものは別にあるのに
本当はどこかでわかっているのに
幼い子どもにまで向ける人間の恐ろしさ
狂っているとしか思えない村の人々
ドイツ兵たち
あの狂気の中で正気をよく保ったと思う
敬虔なクリスチャンの一家で
常に祈り信心深く生きているのに
一番答えが欲しい時に答えも救いもないあたり
映画「サイレンス」を思い出した
宗教の限界だとやっぱり思った
彼は世界を変えたかったのではなく
ただ罪なき人を殺すことを強要するヒトラーに忠誠は誓えない
兵役を拒否すると意思表示をしたまで
セリフはとても少なく
主人公は長い文章などほとんど話さない
妻とはどう話したのかも見えないが
妻の最後の言葉は彼を理解していた
オーストリアの山間部
美しすぎる自然と可愛い子どもたち
自分たちの手で育てる作物や動物たち
木漏れ日や窓からの光
豊かに実った麦畑
羊の毛を刈って毛糸にしたり
水車で麦を粉にする
人の手で生きることを支える実感のある暮らし
実話を基にした映画だという
子どもたちへの愛情と別に
夫婦の愛情が常に存在するあたりも
本当にうつくしかった
17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン
知らずに「名もなき生涯」と同じ国と時代
(オーストリアがナチに併合された時代)
知っていたのはブルーノ・ガンツという俳優さん
が両方に出ていたこと
単に外見で
のぼせ上がった恋をしていた男の子が
それをきっかけに広い世界を知ってゆく
それが夢と幻想、現実を行ったり来たり
なんとも不思議な映画になっている
フロイト教授が17歳の男の子に
「答えを見つけるために生まれるのではない
問いかけるためだ」と言う
なぜ?とわたしたちは考える
自分に世界に問いかける
問いかけるから自分なりの答えが見つかる
哲学的な?抽象的な?言葉が
そこらじゅうに散りばめられている
思わず一時停止ボタンを押したくなる
オットー役の俳優さん(ヨハネス・クルシュ)が
とてもこころに残った
あんな大人になりたい
きっと、またあえる
いきなりの激しい展開
ツッコミどころ満載のインド映画
なのに清々しいのが不思議
人数とダンスで圧倒するのが
インド映画の最大の魅力、ではなく
今回感じたのは「確かな演技力」と言うか
演技には見えないリアリティ
大学の先輩後輩が入り混じって
馬鹿な事もスポーツもワイワイやる
いい意味での少年っぽいシーンが多い
彼らのボディランゲージが
とても「自然」な事に気がついた!
ちゃんとキャラクターやその場面での
表情や動き、相手との距離・触れ方
30年後の彼らは
もう大学生の時のように
大きなアクションや
猫が戯れ合うようなボディタッチはないけど
あの時があったから、ここに来たという
自然な流れと
大人になった落ち着きがあった
インド映画はラストに向かって
盛り上がって賑やかで華やかになるせいもあって
疲れる事もあるけど
これはさわやかな気持ちになって
疲れは感じなかった
(公式サイトは大した情報なし
ブログはとてもユニーク)
シチリアーノ 裏切りの美学
イタリアのマフィアもの
実在した人物、本当にあった裁判らしい
イタリアの法廷ものを初めて観た
アメリカの法廷ものは見慣れた感があり
イギリスの法廷ものは時々だが観てきて
今回、この映画で
イタリアの法廷を観て新鮮な驚き!
国によって、こんなにもちがうんや
マフィアにはマフィアの矜持があり
それを貫く男は実に堂々としていた
(イタリアの石原裕次郎!もしくはイタリアのデ・ニーロー)
彼がなぜ「裏切り」と呼ばれる行為に出たか?
ここがこの映画の見せ場なのだが
負の連鎖を断ち切り大切な人を守るには
これしかなかったのだろうと思う
麻薬中毒の我が子が情けなかっただろうし
力の見せつけ合いのような抗争にも
うんざりする気持ちがあったようやから
そういうマトモな感覚を失った時
それなりの理念や理性を捨てる事に躊躇いもなく
裏で足を引っ張りあったり、家族を殺したり
人間の落ちてゆく様を見せられた
「誇り」を失うと人はこんなにも醜い
(公式サイトは出演者をもっとしっかり紹介すべき
オフィシャル・シークレット
キーラ・ナイトレイは
わたしにとって忘れられない女優さん
「ベッカムに恋して」
これは、正直さっぱり印象なし
「つぐない」
今も覚えている、すごい映画だった
「はじまりのうた」
これがキーラの魅力にノックアウトされた映画
彼女はこの映画で歌うのだー
それがなんとも魅力的!
そのキーラ・ナイトレイが
実に勇気ある、そして切れる諜報員を演じている
この映画は名セリフだらけ
最後に本当のニュース映像が流れたが
こうして戦争を止めようと実際の行動に出る
勇気ある人が世界中にいるのは
人間の良心を感じて泣きそうになる
アメリカ映画の「ペンタゴン・ペーパーズ」も
同じように勇気ある決断をした新聞社の話だったが
政府や官邸の顔色を伺っていれば
その後も取材させてもらえるし
楽でオイシイ目にあえるのだろうが
それでいいのか?
という問いを突きつけられた人たちが
どう動くか?だ
キャサリンの同僚のアジア系の女性が
「悪いこともしていない。けれど正しいこともしていない。」
こういう問題に関しては
「正しい・間違っている」が
あるとわたしは思う
いやいや こんな時代だからこそ
こんな骨太な映画
ぜひ観て、あなたはどう感じたのか?です
今月も映画の中の人たちと
何度も一緒にドキドキしたりムッとしたり
胸を痛めたりした
段々、映画館に来る人が増えてきた
また誰かと一緒に笑って息を呑んで
映画を観る時間がうれしい
noteで時々、映画のお喋りをしています(音声)
よろしければ覗いてみて下さい