よく行く京都シネマでこんな企画があった
最初はてっきり
アートの映画を集めてお勉強するのか
と思っていてスルーしていた
わたしの楽しみは食べる事と映画やから
どんな映画を取り上げるの?で注目したら
観た事がある映画は1本もなく
タイトルは知っている・聞いた事もない
ぐらいのラインナップで
話題の監督さんたちが解説?して下さると言う
アートハウスは日本では「ミニシアター」と言われるもの
「ミニ」と言うとサイズの問題になってしまうが
大ヒットするような映画ではなくても
良質な映画を取り上げる映画館のこと
あ、こんな時なのに
好きな映画で学ぶ事ができるのか!と
なんだかワクワクした
初日、ぎゅうぎゅう詰めのほぼ満席
2日目半分ぐらいになり
トークになるとどんどん人が帰ってゆく
・・・全部は出席しなかったが
自分が選ばない映画ばかりで(笑)
それについて熱く語る人たちの話は
なかなかいいものやったなぁ
また視点を変えて
こんな企画をして下さい!
第1夜「ミツバチのささやき」
正直、映画自体は
とても抽象的でファンタジックで
なぜ名作と言われるのか?も
よくわからなかった
で、映画終了後
濱口竜介監督(先月の「Happy Hour」の監督)
三宅唱監督(「君の鳥はうたえる」)
三浦哲哉氏(映画研究者)のトークで
第一声「アナ、かわいい」
を聞いて「なんや、そんなんでええにゃ」と
思った(笑)
糸口なんて何でも良いのだー
濱口監督は
「その映画に自分が受け入れられている」
という話をされた
よく映画を観ながら寝てしまうのだそう
それでも「なんか良かったなぁ」と
それを感じただけでOKだと
「意味を求める」のも良いんじゃない?
と
わからなくても良い
ただ、そのままに見れば良い
と監督お二人のご意見
今、なんか微妙に表情変わった
この音はなんだ!とか
繋がりがあろうがなかろうが
そうやって気づいてゆくと
何か見えるんじゃないかー、と
実に監督やその人そのままの感じが
自然に出た話や流れで面白かった
左から濱口監督、三宅監督、三浦氏
第2夜「動くな、死ね、甦れ!」
白黒映画なのに画面がきれい
1989年 ソ連の映画
トークは 山下敦弘監督と夏帆氏(俳優「Red」「海街ダイアリー」)
「天然コケッコー」での縁のよう
お二人の話を聞いていても
この映画に近づけず深まらず
なぜこの映画なのか?
どこがどうすごいのか?
など肝心なことが語られず
トークが始まってしばらくすると
人がどんどん席を立って帰ってゆく
わたしも帰っても良かったな
第4夜「緑の光線」
エリック・ロメール監督作
ヴェネチア映画祭で金獅子賞受賞
わたしは主人公にイライラしっぱなし
ぐちぐち、メソメソ
自分からオープンになろうとしない
でも会場からの質問感想で
彼女に共感する!と
レクチャーの深田晃司監督も
飲み会でひとり楽しくなれない時
こんな感じだよね、と
そしてこういう日常を重ねて
人って生きてゆくもんだね、と
またロメールの普段は厳密に脚本を書くやり方
今回は即興劇のように作っていった映画だとか
救いが何度かあるところや
主人公がやたら本心をベラベラ喋ることとか
構成や日本人との違いなど解説
そして監督自身がなぜ映画に傾倒したのか
なぜアートハウス(ミニシアター)が
必要で大切なのか、など
大事なところを押さえた興味深い話で
ちょっと早口なのについていけないくらい
集中して聞けた
日本では「ミニシアター」と言うが
その言葉を使うと劇場のサイズ感の話になる
そうではなく
商業ベースに乗らないが優れた作品を紹介する
そういう映画館がないと僕の映画も
皆さんに観てもらえない
そういう映画館があるから
こうやって海外の小さな作品を観ることができる
など実に映画愛溢れたお話をたくさん聞かせてもらい
「学んだ感」いっぱい
深田監督
第6夜「阿賀に生きる」
予告編を見たくらいの知識で観たが
新潟水俣病が出てくるが
告発するわけでもなく
深刻で重い映画でもなかった
むしろユーモアがあり
チャーミングな阿賀の人々が何人も登場し
笑い、酔っ払い、働く
どこからどこまでが
有機水銀のせいなのかわからないが
腰が曲がり手指が変形し力が入らない
そんな事が時折説明なしに映る
それでも患者だと認定されない
裁判に参加する人たちの寄り合いで
記念写真だとワイワイ騒ぐ姿
月に1回裁判所へみんなで向かう姿は
彼らの日常であることが伝わる
今回のトーク
小森はるか氏(映像作家)
清田麻衣子氏(里山社代表・ライター・編集者)
お二人の話で
まず構成がすごい、と
水俣病を描く映画ではないけど
人々の日常の間に流れの中に
フッと裁判や水俣病のことが出てきて
また日常や地域のことで
と何度もひっくり返す構成になっていて
また出てくる人が
立派な人でもなんでもなく夫婦喧嘩なのか漫才なのか
みたいな会話や歌を歌ったり
酔っ払って喋ったり
お二人のドキュメンタリーってこんなもの
みたいなイメージを覆したと
(ウンウン)
小森監督もドキュメンタリーを撮る人で
実際撮る場面で本当に悩むのだとか
その時に繰り返し、この作品を観ていると
清田さんは実に冷静によく見ていて
とても落ち着いて解説して下さった
彼女の落ち着きと小森監督のソワソワが
対照的だった(小森監督30代前半、まだお若い)
この映画を作った佐藤監督のコメントは
公式サイトで読めるので
興味があれば読んで欲しいが
3年間、この地域の近くを拠点に
スタッフ7人が共に暮らし
地域の人たちの田んぼを手伝い、一緒に飲んで
あーでもない、こーでもないという
葛藤の末生まれた映画のよう
その感じもお二人の話を聞いて
とてもよくわかった
佐藤監督とこの地域の人たちを引き合わせ
この地域で裁判に加わり
分断させられないよう踏ん張り
素晴らしい技術と経験を持つ地域の高齢者を支える「旗野さん」
という方がいるのだが(映画にも出演されている)
小森監督はこの人を撮っているそう
そして阿賀に通っていらっしゃるそうで
今後の彼女の作品も楽しみ
第7夜 「チチカット・フォーリーズ」
最終日、大トリは想田和弘監督
ドキュメンタリー監督として、よく名前が上がり
わたしは「牡蠣工場」を観た
想田監督がこの映画をどう語るか?
男性率高め、しかも客席は結構埋まっていて
映画自体もワイズマン監督のデビュー作であり
精神障害を持つ犯罪者の収容施設を撮ったドキュメンタリー
とてもにこやかで楽しそうに
想田監督がワイズマンの映画の特徴を
解説して下さった
テンポはゆっくりで
想田監督が多大な影響を受けているだけに
熱量もあり、非常によくわかった
主人公がいない
組織を描く
音楽・ナレーション・テロップなし
事前の情報を入れない
時間軸がない
多作である
などなど
これらを押さえながら
ご自身の映画も同じだとか似ているだとか
そんなことも話しながら
この条件の中でやれる事は
構成の順番とその長さだけだと
2週間前後、決められた期間で撮る膨大なフィルムを
どう切り取りどうつなげるか?
その構成力がすごい、と
(編集に1年は費やす)
だから、淡々と撮られているが
実は時間軸は無視してワイズマン監督なりの意図で
私たちは誘導されたのだそう
あらためてドキュメンタリー作家のすごさ
ドキュメンタリーの力を感じた
想田監督は
マイケル・ムーア監督の功績は大きい、と
彼のおかげでドキュメンタリーは
人を集められると知らしめた
彼の映画を僕はあんまり好きじゃないけど、と
「観察映画」というスタイルを持ち
大きな映画館で大ヒットする映画が撮りたいのではない
今の自分のスタイルで
撮りたいモノを自由に撮れる
それが僕のやりたい事だと想田監督は語られた
以前はNHKでドキュメンタリーを作っていて
台本があり、それ以上のことは起こらない
悲しい場面では悲しい音楽がかかる
そんなのに疑問を感じられたが
想田監督の提案は鼻で笑われたそう
なるほどなー
ワイズマン監督を初めて知ったが
想田監督のこともよりわかった
これでこそ、この企画の醍醐味を味わえたんやろなぁ
その人に触れる、っていいな
*写真は許可があった時のもの
ZOOMでスクリーン越しなので
こんな感じでした